医学界新聞

p16とp53とで腫瘍細胞にアポトーシス



 p53タンパク質は細胞分裂とアポトーシスの両方の調節に中心的な役割を果たし,大部分の腫瘍では,その正常な機能が失われている。
 細胞周期に入るのを調節するネットワーク機構は,網膜芽細胞腫感受性遺伝子産物(pRb)により制御されており,pRbはサイクリン依存性キナーゼが介在するリン酸化により制御されている。このキナーゼの阻害因子であるp16は腫瘍抑制因子であり,これが過剰発現するとp53腫瘍細胞ではアポトーシスが起こるが,正常細胞では起こらない。以前,マックス・デルブリュック分子医学センターほかのグループが,ほとんどすべての腫瘍でRb制御経路が失われていることを示した。
 同グループのV. Sandigたちは今回,各種の腫瘍細胞株でp16を過剰発現させると,pRb濃度の低下によって,細胞分裂の停止だけでなくアポトーシスが徐々に始まることを示した。
 彼らはこれを利用して,p16による増殖阻害とp53によるアポトーシス誘導を併用する手法を編み出した。正常または変異型p53のどちらかを発現しているRb腫瘍細胞に両方の遺伝子を誘導すると,p53だけでは達成できないアポトーシスの効果的な誘導が行なわれた。癌細胞へ導入すると,ヌードマウスでの皮下腫瘍の発達は完全に防止された。

“nature medicine”march.1997より