医学界新聞

歩み寄ることでよりよい外来診療が

高木 誠 東京都済生会中央病院内科医長



 対話の中に出てきた浜田先生の指摘には,特にわれわれのような総合病院の内科医にとっては的を射た忠告やアドバイスが多いと思います。楽しかったし,勉強になりました。
 いま,内科の中でも,入院偏重の時代から外来重視の傾向が出てきています。外来診療の上では面接が重要ですし,精神科領域にまたがるような患者さんも非常に多いですよね。いままで内科ではそういう患者さんをみるための正式なトレーニングを行なっていませんでしたが,これから外来が重視されるにあたって,やはり面接から始まる精神科的な診察の技法や,精神科的疾患に対する対処の方法を身につけていかなければいけないと思います。

すべての科に共通したものがある

 内科医はいままで精神科的な訴えをする患者さんに対して逃げ腰のところがありました。しかし今回の本と浜田先生の前著『一般外来における精神症状のみかた』を通していちばん勉強になったのは,内科医もそういう患者を受け止めるべきだということです。何でも精神科に依頼するのではなくて,まず自分で受け止めてつき合ってみて,それから考えてもよいのではないかという基本的なスタンスです。
 また,精神科医も内科医も,基本的な患者さんのみかたという面ではかなり共通したところがあります。それは患者さんと長くつき合うことが多いからで,浜田先生が言うように精神科医も身体の診察をしたほうがよいし,内科医は逆に身体の診察だけでなく心の診察にも重きを置かなければいけない。お互いに歩み寄ることでよりよい外来診療のあり方ができてくるのではないかという点に非常に共感を覚えました。
 もちろんうつ病や痴呆,不眠など,内科医が日頃よく遭遇するような,個々の精神科的病態への対応のしかたに関しても勉強になりました。内科と精神科には,いま僕自身の中では少なくなったけれどもまだ結構ギャップがあるんですよね。最近は精神科の中でもいわゆる「リエゾン精神医学」など他科との溝をなくすような動きが出ていますが,まだ医師の世界では距離があるのではないでしょうか。しかしこの本には,内科だけでなくすべての科に共通したものがあると思います。

医療に対する適切な批判や意見

 本づくりが終わってもまだやはり浜田先生に聞きたいことはありますよ。精神症状のみかたという医学的な側面と,もう1つは,いまの医学や医療全体に対する,お互いに共通した疑問や提案です。先生との会話にはそういう2つの大きな側面があります。後者に関してはまだまだいっぱい話したいことがありますね。
 浜田先生のすごいところはやはり,単に精神科の医師というだけではなくて,同時にいまの医療に対する適切な批判や意見を持っていることだと思います。精神症状のみかたとともに,いまの医療に対する問題点についても取り上げているところが,この本を読んでみて非常に面白いところなのではないでしょうか。
 いま総合病院は試行錯誤している時代なんですよね。今後個々の病院がどういう基本方針でどういう医療をめざすのかということが,非常に問われている時代だと思います。そういう意味でもこの本は参考になると思います。
 いま僕らの病院がめざしている方針として,「ホスピタルベースド・プライマリーケア」があります。具体的な取り組みを言うと,病院の中のプライマリーケアのあり方の一環として,今年から新しい外来の試み「プライマリークリニック」を始めました。ここでは,専門診療と総合診療をつなぐ医師とともに,看護婦の役割が非常に重視されている点が特徴です。
 プライマリーケアの現場で働く医師や看護婦にも,本書をぜひ読んでもらいたいと思います。

(談)