医学界新聞

1・9・9・7
新春随想(3)

専門看護婦時代の到来を予感

濱口恵子
(東札幌病院副看護部長)


 がん医療,特にがん看護に携わる者にとって,昨年は大きな変革の年であった。
 まず,5月には日本看護協会により「がん看護」の専門看護師が「精神看護」の分野ととも認定され,全国で初の6人の専門看護師が誕生した。いよいよわが国においても看護婦が特定の専門分野を持ち,病棟・病院を越えて専門性を発揮する時代を迎えた。
 私は昨年9月から6週間,アメリカで研修を受ける機会に恵まれ,アメリカの専門看護婦の活動を垣間見ることができた。アメリカではClinical Nurse Specialist(CNS)が,さらに症状コントロールやSurgical,Neurologyなどの特定の専門分野を扱っており,Cancer Adaptation Nurse,Nurse Education Specialistなどの専門看護婦や医療スタッフチームと連携し,ベッドサイドですばらしい実践をしていた。しかもその実践が即研究に結びついており,実に見事であった。

主体的に学会にかかわって

 7月には,第1回日本緩和医療学会が札幌市で開催された。同学会は,がん医療を診断期から終末期までの一連のプロセスとしてとらえ,さらに「がん」を生物学だけではなく,精神・心理学,社会学,倫理学,看護学等の各領域,専門分野を包摂し,患者・家族のQOLを基盤として科学的根拠に基づいた緩和医療の実践・研究を行なうという画期的な学会として創設された。
 開催にあたっては約1200名もの人が集まったが,その70%が医師であり,2日間とも発表会場がいっぱいという盛況であった。そして現在学会の中に,日本全国どこでも,質の高いがん性疼痛のコントロールを科学的根拠に基づきながら実践できることを目的に「がん性疼痛緩和ガイドライン作成の研究班」が結成された。さまざまな分野の医師,看護婦,薬剤師等が委員となりプロジェクトが動きだした。
 また同11月には,日本癌治療学会と日本がん看護学会による共同シンポジウムが,横浜市で開かれた日本癌治療学会のプログラムの1つとして開かれ,在宅がん医療に関する熱心な討議がなされた。
 今後ますます在宅でのがん医療が発展・普及していくことを予測させるシンポジウムであったが,その中で看護が担う役割は大きい。これからは,在宅医療システムの確立,ケアの質の向上が求められることになるだろうが,医療者の教育の問題を考えていかねばならないだろう。

これからの抱負

 がん看護専門看護師に認定されて約7か月が経過した。副看護部長という役割を担いながらの限られた活動であるが,最近は,院外の教育・相談活動や研究プロジェクトの一員としての活動など,病院を越えて連携する活動が増えた。これからも実践・教育・相談・調整・研究の5分野の活動を積み重ね,臨床で実践する者として,病棟看護婦とともに頑張っていきたい。
 本年11月には,第12回日本がん看護学会が札幌市で開催の予定である。学会では海外で活躍する専門看護婦を迎え,彼女らのアセスメントプロセスや実践,また,今までの歩みを共有したいと計画中である。その日までの課題として,自分たちの実践をさらに高め,まとめていく作業をしていきたいとも考えている。
 なお,当院では症状コントロールや化学療法の専門看護婦を招き,講義やベッドサイドティーチング,カンファランスに参加していただくことを実践している。これからは海外の看護職と連携していけるネットワーク作りをしていきたいと考えているが,それらは私たちの努力次第でできることを確信している。
 わが国においても,今後病棟看護婦がより専門性を高め,また化学療法や疼痛緩和など各分野の認定看護師や専門看護師等の多くの専門看護婦が誕生し,互いに連携し合い実践を高めていける日が来ることを楽しみにしたい。
 大きな夢に向かって,足元を固めつつ,一歩一歩を歩んでいきたい。