医学界新聞

特別シンポジウム

 未来技術との遭遇


 第9回日本内視鏡外科学会の会期中に開かれた特別シンポジウム「未来技術との遭遇」(司会=北島政樹会長,名大 高木弘氏)では,現在はまだ内視鏡外科に関連はしていないが,近い将来には深く関わってくると予想される分野のハイテクノロジーの専門家を招き,各界の技術の最先端が披露された。参加したシンポジストの企業とテーマは,(1)任天堂「驚異の画像を追い求めて-ゲームソフトにおけるコンピュータ・グラフィックスの最先端」,(2)三井造船「フィールド用テレロボットの開発-ロボットは工場を出て,人間と共存し始める」,(3)ソリッドレイ研究所「仮想現実(Virtual Reality)の世界へようこそ」,(4)松下技研「究極のインターフェイス-音声認識技術の探求」,(5)NTT「光ファイバーを夢が走る」。


“スーパーマリオ64”

 先陣を切った宮本茂氏(任天堂)は,「スーパーマリオ64」の画面をスクリーンに流し,最新のビデオゲーム機「ニンテンドウ64」の3次元表示能力とリアルタイムレンダリング能力を解説。さらには,ゲームのコンピュータグラフィック利用法を解説すると同時に,本機専用のアナログジョイスティック付きの3次元コントローラーをも紹介した。

“フィールドロボット”

 原憲二氏(三井造船)のテーマは,自動化が容易ではないフィールドロボットの開発事例。フィールドロボットは,工場生産ラインで稼働する産業用ロボットに比べて,作業対象が非定型的であるために,作業の中で人間の判断や認識力に頼るところが多く,生産性向上,作業性改善,作業環境の改善などの目的を達成するためには,人間とロボットの役割分担をどのように構成するかがポイント。この観点からフィールドロボットのシステムや,人間と共存して働くための機能を持ったアーム,人間と機械とのインターフェース部分としての操作性,快適性を重視した操縦装置や遠隔操縦に有効な視覚支援装置の例も紹介した。

異世界への“Virtual Reality”

 続いて神部勝之氏(ソリッドレイ研究所)は,「Virtual Realityを使って,新幹線から惑星ジェットコースターまでを体験してみよう」というサブタイトルのもとに,NASAで産声をあげたVirtual Reality技術の応用例を実演。
 世界最高速グラフィックワークステーションや大型立体スクリーン,グローブ型入力装置を使い,「新幹線」と「惑星ジェットコースター」の仮想世界において,Virtual Reality技術の実際を参加者に体験させた。

“音声認識技術”の現状と将来

 二矢田勝行氏(松下技研)のテーマは,「音声認識技術の現状と将来」。
 人間が言葉を理解する能力に比べると,機械による音声認識能力は遠く及ばない。しかし,音声認識技術の進歩やCPUの高速化,メモリの大容量化によって,「カー・ナビゲーションなど車載機器の制御」や,音声によって電話番号を検索・接続する「音声ダイヤル」などの音声認識装置の実用化が現実のものになってきている。二矢田氏は,通訳装置や通訳電話の実現に夢を駆せながら,「音声認識技術の現状と将来」を報告した。

光ファイバーを夢が走る

 高木誠一氏(NTT)がテーマとした“光ファイバー”を用いた技術は,近年驚異的な進歩を遂げ,現在,一対の光ファイバーで約13万人の通話が可能なシステムが使われている。
 高木氏によれば,最近の開発のポイントは波長成分の利用で,実験レベルでは,100を超える波での伝送も可能になり,このシステムを使えば,1秒当たり“ギガ”を超えて,“テラビット”もの膨大な情報が伝送できるようになった。その結果,高精細な映像通信が安価に実現できるとともに,従来の「物流」に関しても大きな変革が迫っている。また,単なる映像通信にとどまらず,“雰囲気”や“感性”の伝達をも可能とする新しいコミュニケーション時代の到来が想定されるという。


 音響と映像を縦横に駆使した以上5氏のプレゼンテーションに,会場内は「ミニ・シアター」の様相を帯び,しばらく驚嘆の声が流れた。その意味でも,今学会のテーマ“Endoscopic Surgery towards the 21st Century”にそった特別シンポジウム「未来技術と(内視鏡外科手術と)の遭遇」は,まさに「内視鏡外科学会」ならではのイベントと言えよう。

FUTURE PARK

 第9回日本内視鏡外科学会に併設された「FUTURE PARK」と名付けられた展示場には,上記の「未来技術との遭遇」を直接体験するために各種の機器を常設展示。
 特別シンポジウムと同様,通常の医学系の学会とは趣きをまったく異にした雰囲気は,ハイテクノロジーとの遭遇と同時に,参加者にとっては束の間の憩いを満喫する場ともなった。