医学界新聞

MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内

救急診療の現場で必要な内容をすべて網羅

今日の救急治療指針 前川和彦,相川直樹 総編集

《書 評》小濱啓次(川崎医大教授・救急医学)

 救急外来には各種各様の疾患を持つ患者が来院する。医師はこれらの救急疾患に対して適切な診断,治療を行なわなければならないのであるが,救急診療の現場においては,どのような疾患なのか,どのような治療が必要なのか,なかなか判断しかねる場合が多々ある。この時,手元にすぐ利用できる救急診療に関する成書があれば非常に便利である。
 今回,医学書院から上梓された『今日の救急治療指針』は,これに応える書ということが言える。本書を一読して言えることは,本書が救急診療の現場をよく知っている編者や著者によって書かれているということである。

適切な診断,治療を行なうために

 今までに救急診療に関する多くの成書やハンドブックが出版されているが,救急診療の現場に即した本は少なかった。それは多くの本が救急診療の現場に即した内容になっておらず,どちらかといえば理論を主とした本が多かったからである。救急診療の現場においては,実際に即した本が必要であり,これによって適切な診断,治療を行なうことができる。
 総編集者である前川,相川両教授は,日本救急医学会の理事として救急医学や救急診療に精通した方である。このことより本書は各種救急疾患に関する診断,治療はもとより,救急診療に必要な緊急処置,緊急検査,また法的なことも含めで要領よくまとめてあり,実際に即した本となっている。多くの医師が本書を救急診療における座右の書として利用されることをお勧めする。
(B6・頁800 税込定価13,390円 医学書院刊)


てんかん診療にあたる医療従事者に

てんかん診療 指針としての100の原則(第3版)
 W. H. Theodore,他 著/渡辺一功 監訳

《書 評》関 亨(慶大・小児科)

 本書は,“Major problems in neurology(John N.Walton編)vol. 12”として,1984年にEpilepsy 100 elementaly principles(Roger J. Porter,NIH,てんかん部門主任,162頁)として出版されたモノグラムの第3版である。

てんかん診療に重要な100の指針

 第1版より一貫しているのは,本書はてんかん診療の教科書ではなく,てんかん包括医療における重要な100の指針についての最新の明確かつ詳細な注釈書だということである。しかも,この分野における著者の洞察力に富んだ個人的経験が随所におりこまれていることは特筆してよいと思われる。したがって,みかたによっては入門書にもなるし,また,専門医にとっても一読に価するものである。
 第1,2版はR. J. Porterによるが,第3版はWilliam H. Theodore(NIH,臨床てんかん部門主任)とR. J. Porter(米国,Wyeth-Ayerst Research副所長)の連名になっており,その後のてんかん医療の進歩,特に新しい抗てんかん薬,てんかん外科の進歩などを含めた大改訂になっている。
 なお,Porterが新たに製薬会社に勤務することになったので,薬剤の項はTheodoreが記載したことを序文に述べており,本書の内容は著者らの個人的見解であり,公的機関の公式見解ではないと述べていることとともにこまかな配慮がなされている。
 主な内容は以下のとおりである。
 第1章患者へのアプローチ,第2章診断:てんかんの原因,第3章診断:発作とてんかん,第4章診断:部分発作,第5章診断:全般発作,第6章診断:てんかん重積状態,第7章診断:非てんかん性発作と熱性痙攣,第8章治療:総論,第9章治療:薬理と薬物動態,第10章治療:部分発作,第11章新しい実験的な薬剤,第12章治療:全般発作,第13章治療:てんかん重積状態,第14章治療:鎮静作用のある抗てんかん薬の役割,第15章治療:てんかんにおける外科治療の役割,第16章治療:てんかんと妊娠,第17章てんかんの心理社会学的側面,第18章将来:研究の重要性,また,付録には国際てんかん連盟と国際てんかん協会の支部や参考文献が掲載されている。
 翻訳は,本邦におけるてんかん研究,診療の第一人者である渡辺一功教授ならびに同教室の優れたてんかん専門医によるものであり,Theodore,Porterらの意図するところが十分に述べられている。
 本書は,小児科医,精神科医のみならず,てんかん診療にあたるすべての医師に役立つものであり,広くお薦めしたい。
(A5・頁284 税込定価4,635円 医学書院MYW刊)