医学界新聞

第40回武田医学賞に杉田秀夫,小澤えい二郎,中村祐輔氏ら


 (財)武田科学振興財団(森田桂会長)による第40回武田医学賞の贈呈式が,さる11月12日,東京のホテル・オークラにおいて開かれた。今回の受賞者は,杉田秀夫氏(国立精神・神経センター総長),小澤*二郎氏(同センター神経研究所長),および中村祐輔氏(東大医科研ヒトゲノム解析センター長)の2件3氏。

 杉田氏と小澤氏の受賞対象となった研究は「筋ジストロフィーの病態の究明」。 杉田氏の業績は,神経・筋疾患のうち遺伝性筋疾患,特に進行性ジストロフィーに関する研究で,主要な研究は,(1)血清クレアチンキナーゼに関する研究,(2)筋ジストロフィーのCa説の提唱,(3)DMD(Duchenne型筋ジストロフィー)筋の崩壊メカニズムに関する研究,(4)ジストロフィンの発現に関する臨床病態的研究からなる。また,小澤氏の業績は,(1)DMD・BMD(Becker型筋ジストロフィー)に関する分子レベルでの診断学の確立と,その本態の基本的な理解を可能としたこと,(2)SCARMD(severe childhood autosomal recessive muscular dystrophy)の本態に関する理解およびその原因遺伝子のクローニングの方針の確立と実践である。
 一方,中村氏の受賞対象となった研究は「ヒト遺伝子多型マーカーの単離とがんを中心とした疾患遺伝子の解析」。中村氏は,多数のマーカーの単離と遺伝的染色体地図を作製し,疾患家系を解析することによって,以前には解析不能であった遺伝性の病気の原因遺伝子をその染色体の局在を手掛かりにして追い詰めていく方法(ポジショナルクローニング法)を可能にしたユタ大学の主要メンバーの1人。氏の業績は,多型性遺伝子マーカー,特にVNTRマーカーと呼ばれるマーカーを単離する方法を確立するとともに,自らその方法を利用して,多数の多型性マーカーを単離した点にあり,ユタ州などの大家系を用いて解析したヒトの遺伝的染色体地図上の位置が決定されたこれらのマーカーを,遺伝病やゲノムの研究者に供給したことによって世界的に認められている。