医学界新聞

カタカナ語化された看護用語の理解

第12回日本健康科学学会一般演題より



 さる11月14-15日の両日に,東京のグランドヒル市ヶ谷で開かれた,第12回日本健康科学学会(会長=杏林大助教授 信川益明氏)では,「21世紀の健康科学の展望」をテーマに,シンポジウム(1)保健,医療,福祉,教育を支援する健康科学(司会=国立循環器病センター 稲田紘氏),(2)環境とストレス(司会=日大教授 青木和夫氏)や会長講演が行なわれたが,(1)では中村恵子氏(杏林大教授)が看護を代表して,看護基礎教育と卒後継続教育の連携について意見を述べた。
 一方,一般演題には,健康保持からリハビリテーションまでを包括する医療がこれからは必要と,健康科学を取り巻く各分野から58題の発表があり,看護部門からも多くの発表が行なわれた。
 その中で,飯田恭子氏(都立医療短大教授)は,「カタカナ語化された看護用語とその理解について」を発表。都内の看護教員養成コースに通う看護婦79名(臨床経験平均9.7年)を対象にカタカナ看護用語の知識率,使用率,理解度を調査したもので,看護学生から,「意味が明確でない,人によって使い方が違う,スペリングの検討がつかないために辞書で確認できない」という意見が多かったことが調査のきっかけとなったようだ。
 調査結果によると,アセスメント,インフォームドコンセントなどはほぼ全員が知っていると回答し,自分でも使用していると回答しているものの,英語表記が正しくできた者は前者で19%,後者34%であった。また,インターベンション,バイオフィードバック,パターナリズムなどのカタカナ語は,知識,使用,理解ともに極めて低く,意味を正確にとらえないままに使用されることから,本来の意味からずれていく危険性を危惧している。
 さらに臨床で使用されるカタカナ語の中には,適切な日本語があるにもかかわらず使用しているものも多くあり,コントロール,アポイントメントなどは日本語化しているとも述べた。しかしその一方で,スペリングに関しては正解率が全般的に低く,本来の英語を知って使っている者は非常に少ないことを指摘した。
 欧米を発端とする看護概念には,文化的背景の違いなどもあり,確かに日本語に訳しにくい点は指摘されよう。そのため,本紙2214号で紹介した「クリティカルシンキング」などのようにそのまま訳さずに共通語にしようとする傾向が最近では多く見受けられる。しかしながら,飯田氏が指摘するように,ややもすれば本来と違った意味に使用されることもありえることから,使用に際しては十分に言葉の意味を理解し,かつ適切に用いられることが望まれる。