医学界新聞

看護におけるシステム論とは

第2回日本システム看護学会開催



 第2回日本システム看護学会(会長=東北大助教授 長谷川啓三氏)が,さる11月9-10日の両日,名古屋国際会議場で開催された。参加者は約200名であった。

システム論をこれから学ぶ人のために

 学会初日の冒頭には,「システム理論」と聞くと「難しくて理解できない」と即答してしまいがちな参加者のために,長谷川会長が「システム論入門」を講演。「システムとは,ある目的を遂行するため,お互いに依存し合っている集合体で,家族,地域,病院も1つのシステムと考えられる。そこにある人間関係や問題を理解し,効果的な介入によって問題を解決するために,システム思考が取り入れられる」と解説した。
 また看護との関係において長谷川氏は,「看護の領域でこのシステム論が活躍できる場としては,家族看護,看護管理,看護の意味論が考えられる。家族看護では,看護の対象は患者だけでなく患者を含めた家族全体をシステム全体ととらえ,効果的な看護を行なう。看護管理では,職場内の人間関係(看護婦同士,婦長,医師,コメディカル等)の調整にシステム論が生かせる。看護婦の定着や病院全体のレベルアップには,人間関係が円滑であることが大切であり,トラブルを解決する際にシステム論を用いることができる。看護の意味論では,トラベルビーの『人間対人間の看護』(医学書院刊)でも示されているように,看護は患者が病気であっても死が近づいていても,人生の意味を見出せるように援助することである」とまとめ,患者や家族は「病気だ」と意味づけされることで行動に影響を及ぼすため,その意味づけを変えることで行動に変化をもたらすことができるが,そこにシステム論が活躍することなどを述べた。

看護現場からのシステム論の発表

 一方ワークショップは,初日に「短期療法と看護」(奥羽大 小野直広),「家族療法シミュレーション」(児玉クリニック 児玉真澄,国立中部病院 牛田洋一),「動作療法」(愛知県立心身障害児療育センター 吉川吉美)が,また2日目には,「カルガリー家族療法」(山口県立中央病院 戸井間充子,山口県立大 森山美知子),「行動科学からみた老化性痴呆症とその対応について」(筑波大 井上勝也),「看護管理のケーススタディ」(名古屋共立病院 奥村純子)の6題が行なわれた。
 さらに,看護教員をはじめ看護学生や看護婦から,システム論の学習の成果等の研究発表が行なわれたが,看護の現場でシステム論がどのような効果をもたらしているのかが具体的にわかる発表であった。
 今大会の最後のプログラムとして開催されたシンポジウム「生きているシステムをどう活用するか」には,勝又正直氏(名市大看護短大),野村勢津子氏(厚生連更生病院),長谷川氏が登壇。家族や職場,さらに地域や国家に広くシステム論が生かされることなどが端的に説明された。
 日本システム看護学会は,看護関係者だけでなく,心理関係者とともに作られた学会であるため,看護系学会の中でも一味違う視点を持つ学会のように思われる。また,演者の発表や解説もわかりやすく,システム論が参加者全員に理解できるようにという配慮が感じられる学会であった。