医学界新聞

スーパーフィブロネクチンは転移を阻止する


 細胞接着にかかわるインテグリンは,細胞外マトリックス成分への腫瘍細胞接着に介在することで転移に重要な役割を果していると考えられている。転移は癌治療の重大な障害であるため,腫瘍細胞接着を阻害する治療をすることで,種々の癌の転移を効果的に抑制でき,それにより延命もできるはずである。
 バーナム研究所ほかのR.Pasqualiniたちは,重合型フィブロネクチンすなわちスーパーフィブロネクチン(sFN)が,in vitro とヌードマウスで抗転移作用を持つことを見出した。in vitro では,sFNは細胞外マトリックス物質への細胞接着を阻害し,細胞の分散・遊走を阻害した。またex vivo in vivo の実験で,sFNはヒトのメラノーマや骨肉腫,癌細胞の転移を防ぐことができた。これらの結果は,sFNの抗転移効果が接着や遊走機構を妨害することに起因していることを示唆している。

“nature medicine” Nov.1996より