医学界新聞

アルツハイマー病:頭が重い……


 アルツハイマー病は通常,老年期に発症するが,なかには遺伝的素因のために中年期に発症する場合もある。
 南フロリダ大学サンコースト・アルツハイマー病研究所のJ.Hardyたちは,変異遺伝子がこの疾患を引き起こす仕組みがわかったとしている。健常者では,このアミロイドβ前駆体タンパク質(APP)のプロセシングの結果,Aβ1-40とよばれるペプチドが大量に生じ,同時に,それより重い(アミノ酸の数が多い)ペプチドAβ1-42(43)が少量ながら生じる。アルツハイマー病の特徴の1つは,この重いペプチドが脳内の老人斑に蓄積することである。
 Hardyたちは,早い時期に老衰を引き起こす原因遺伝子として知られるプレセニリン1の変異が,アミロイド前駆体タンパク質のプロセシングを変化させることを確証した。このプロセシングの変化によって,アルツハイマー病患者の脳に見られるように重いペプチドAβ1-42(43)の生成量が増加するのである。

“nature”24. Oct. 1996 より