医学界新聞

アルツハイマー病の生化学的マーカー


 アルツハイマー病(AD)の確定診断は剖検でしかできず,発症早期の簡便な指標を探し出すことはきわめて重要な課題となっている。
 ブリティッシュ・コロンビア大学ほかのM.L.Kennardたちは,AD患者と健常者の血清および脳脊髄液(CSF)中の鉄結合タンパク質p97の量を調べた。p97を選んだ根拠は,このタンパク質が,AD患者の脳内アミロイドと特異的に関連する反応性ミクログリアで発現するからである。彼らは,粒子濃縮蛍光免疫法という技術を用い,健常者と比べてAD患者すべてで血清中のp97量が上昇していることを見つけた。しかし,鉄結合タンパク質トランスフェリン量は,両グループとも同レベルだった。また,脳脊髄液中のp97およびトランスフェリン量は血清中のレベルと同じ傾向を示した。この結果は他の患者集団で追試する必要があるが,これらの知見は,p97がADの診断および監視に役立つマーカーとなる可能性を示唆している。

“nature medicine” Nov. 1996 より