医学界新聞

「アメリカのナーシング」

マリー・T・コリンズ(Area Director)

 アメリカでは看護は日本におけるとはよほど違います。すなわち看護は専門的教育を受けた男女の従事する高級な職業として尊敬を受けているのですが,これは必ずしも始めからそうであったわけではなく,6,70年前までは看護婦といえば教育程度も低く,決して立派な職業とは考えられていなかったのであります。それが今日の高い水準に引上げられたのは,霊感を受けた勝れた看護婦の指導の下に,すべての看護婦が勇気を持って長年努力を続けた結果であって,アメリカにおける看護を語る場合,特にこのことを申し上げるのは,日本の看護婦も勇気と深慮を持つならば,同様な職業的高さに達することが不可能でないと考えていただきたいからであります。
 アメリカでは少なくとも18歳に達し,ハイスクールを卒業した少女でなければ看護婦養成所に入学する資格がありません。アメリカのハイスクール卒業生は小学校で6年,ジュニアハイスクールで3年。ハイスクールで3年,合計12年の学校教育を受けておりますが,ハイスクールを卒業しただけの18歳の少女では未熟で,看護婦として当然期待される責任を果すには,年齢的にも十分とは考えられません。したがって評判のいい,大きな看護婦養成所では,見習看護婦として入学を許可する前に少なくとも1年,時には2年カレッヂで勉強することを条件としているところもあります。
 アメリカの看護婦養成所の課程は満3か年で,そのうち最初の半年はもっぱら教室および実験室での勉強に当られます。基礎科学はすでにハイスクールで学んで来ていますので,教室での授業はカレッヂと同程度のものです。この半年が終ると,生徒は病室で実習をはじめますが,その間も週に何時間かは教室へ出ます。最初の半年,教室で授業を受けている際も,多くの時間を割いて看護に関する種々の実物教育が与えられ,かつ実習をいたしますが,これは実際の病室と変らない設備を施した特別な教室を用いて行なわれます。
(以下略)

(「看護学雑誌」創刊号より,原文のまま。ただし旧字,旧かなづかいは改めた)