医学界新聞

日本糖尿病教育・看護学会が設立

糖尿病看護の研究と実践の場の向上をめざして



 糖尿病患者の増加に伴い,患者および家族に対する教育を含めて看護の役割が拡大してきている。このような状況を背景として,河口てる子氏(阪大助教授・発起人代表)らの呼びかけにより,日本糖尿病教育・看護学会が設立。さる10月13日に,設立総会および第1回大会が,日本赤十字看護大学にて開催された。
 「糖尿病教育・看護に関する理論,および応用の研究,調査を行ない,それについての発表,知識・情報の提供や交換により,糖尿病教育・看護に関する向上を図り,もって日本における学術の発展に寄与すること」を目的に設立された同学会総会には約230名が参加。評議員55名とその中から理事・監事12名が選出,承認され,野口美和子氏(千葉大教授)が初代理事長に,副理事長に河口てる子氏が就任した。

糖尿病患者教育と看護研究

 設立総会後に行なわれた会長講演「私の糖尿病看護研究の歩み―患者の自己意識との遭遇」では,「20年前にはセルフケアの概念がなかった。看護婦のいいつけを守る患者が疾病認識が高く,患者教育は知識の注入と考えていた」と,1972年から取り組んでいる慢性疾患患者に関する研究を振り返り,現在は老人看護にその学びを生かしていることを述べた。
 シンポジウム「糖尿病患者教育をめぐる現状と問題点」(座長=神奈川県立衛生短大教授 倉田トシ子氏)では,土屋陽子氏(慈恵医大)が1991年から神奈川県下で進めている「神奈川糖尿病患者研究会」の会員動向,活動状況を報告。「会員はのべ110名を越えるが退会者も多く,最大の理由は退職や勤務交代で糖尿病看護から離れることにある。研究会に熱心であった病院の中堅婦長が退職や勤務交代をした場合には,その病院からの参加者は少なくなる。技術の発展,質の向上を目的としているが,参加者は初心者が多く,毎回初歩的な研修しかできない状況」など問題点を指摘した。
 また杉田和枝氏(朝日生命糖尿病研究所)は,研究所に定期的に通院する約5000名の患者に対する教育入院,糖尿病教室,キャンプなどで行なっている看護婦による患者教育の実態を述べ,そこでの役割を論じたが,土屋氏同様に「勤務交代制度」がスペシャリスト育成の障害となっていることを問題にあげた。さらに中村丁次氏(聖マリアンナ医大西部病院)は栄養部からの問題を,河口てる子氏は「看護婦による自らの糖尿病教育スペシャリストの育成が重要であり,学会活動を通して研究の蓄積,実践の改善を進めることが必要」と述べた。
学会事務局:〒565 吹田市山田丘1-7 大阪大学医学部保健学科成人・老人看護学講座 TEL(06)879-2546/FAX(06)879-2461