医学界新聞

第24回臨床免疫学会開催

●臨床免疫学の最新の話題を提供


 第24回臨床免疫学会が,伊藤幸治氏(東大教授・物療内科,写真)のもと,東京の砂防会館と全共連ビルにおいて9月25-27日に開催された。
 近年,多くの疾患に免疫異常が関与することが判明し,また,基礎医学的手法,特に分子生物学的手法の導入がこの領域の解明に大きな役割を果たしていることから,今回も基礎医学と臨床医学の各分野にまたがる横断的な構成がなされ,臨床免疫学の最新の話題が提供された。

基礎医学と臨床医学の両側面から

 その流れを反映し,「免疫疾患の新しい考え方とその制御」(司会=順大教授 奥村康氏,東大 奥平博一氏)と題したシンポジウムが行なわれた。
 はじめに,平形道人氏(慶大)が多発性筋炎・皮膚筋炎(PM・DM)の自己抗体特に高頻度に検出される抗アミノアシルtRNA合成酵素(ARS)抗体と,抗SRP(signal recognition particle)抗体に関する新しい知見を提示。分子レベルでの解析により,それらの抗体がMHCクラスII遺伝子と特異的に関連し,それぞれ異なった臨床像を持つ症候群に関連することを証明した。さらに,これら抗体の産生機序の解明が,筋炎の病因解明の鍵となると述べた。

炎症抑制の鍵は遺伝子発現調節

 続いて,「免疫・炎症の遺伝子レベルでの制御」と題して,大塚毅氏(九大)が登壇。サイトカインの抗炎症効果の発現機構解明による炎症反応制御法の可能性を示唆した。IL-4, IL-10は免疫性疾患の病態にかかわる炎症性サイトカインや活性酸素,プロスタノイドの産生を抑制し,同様に炎症抑制に働くサイトカイン活性を増強する。大塚氏は,IL-4, IL-10はシクロオキシゲナーゼ(COX)の活性をCOX2遺伝子の発現抑制により低下させ,同様に炎症性サイトカインの抑制も遺伝子レベルで発現調節していると述べた。
 IL-5の産生制御によるアトピー性疾患の治療について森晶夫(東大)が報告。気管支喘息やアトピー性皮膚炎に対し,病因となる好酸球増殖・活性にかかわるIL-5の産生を抑制することが治療の重要なターゲット。森氏は,ヒトT細胞のIL-5産生には遺伝子転写レベルでの制御が重要であることから,IL-5遺伝子転写に必須の転写因子の解明が望まれると述べた。また,最近発見されたON01という薬物は,IL-5遺伝子転写だけを効果的に抑制し,蛋白レベルでの転写を制御することを明らかにした。