医学界新聞

第26回QOL研究会が開かれる


 1988年に発足したQOL研究会(代表=国立循環器病センター 萬代隆氏)は,海外の専門家を招聘した講演会や懇談会,また「国際QOL学会」などへの研究成果の発表を通して,医療面からのQOL研究実践活動を行ない,現在は国内1217名,海外80名の医師および健康管理専門家を擁するまでに至っている。同研究会は,これまで主に関西地区を中心に活動を続けてきたが,第26回QOL研究会は,江郷洋一会長(帝京大助教授)のもとで,さる9月7日,東京の明治製菓本社講堂において開かれた。
 研究会では,(1)「科学としての医学にどのような価値観が参与するか」(聖路加国際病院名誉院長 日野原重明氏),(2)「QOLにおけるライフスタイルの意義」(阪大 丸山総一郎氏),(3)「日本におけるQOL研究-QOL研究会の歩みから」(萬代隆氏),(4)「QOLの概念の評価と応用」(国立長野病院 武藤正樹氏),(5)「心臓外科手術とQOL」(江郷洋一氏),(6)「医薬品審査とQOL評価」(厚生省薬務局 森和彦氏),(7)「臨床試験におけるQOLの評価」(東大 大橋靖雄氏),(8)「患者の立場からの薬物療法の評価」(中央大 小川京子氏),(9)「臨床医学における主観性」(東医歯大 佐久間昭氏)など幅広い視点からQOL研究の最新の知見が報告された。

QOLの「理念」と「概念」

 まず日野原氏はその講演の中で,「医学がめざした4つのゴールは,(1)To Prevent(予防),(2)To Cure(治療),(3)To Prolong Life(延命),(4)To Improve the QOL(QOLの改善)である」と述べ,ややもすればいわゆるサイエンスに偏りがちな現代医学に批判を加えて,QOLの基本理念を示した。
  また武藤氏は,英語のlife(生命,生活,人生)という言葉の多義性から,人間の生 命の質に関する「保健医療関連のQOL(health-related QOL;HRQOL)」から,生活条件(living condition)を扱う「社会環境関連QOL」に至るまで広範な領域に広がったQOLの概念を,その歴史的背景から説き起こし,HRQOLの評価と応用に関する様々な手法を詳説。さらに,人口構造・疾病構造・社会経済構造・医療体制の大きな変化に対して「健康転換(health transition)」という概念を提議し,パラダイムの転換を示唆した。
 一方,萬代氏はQOL研究会の歩みを振り返るとともに,さらなる発展と今後への抱負を語ってその講演を締めくくった。