医学界新聞

クリティカルシンキングとは

アルファロの講演・セミナー開かれる



 さる8月18-19日の両日,アルファロの講演・セミナー「看護診断ケースマネージメントクリティカルシンキング」(国際医学・看護学会議センター主催)が,千葉市の幕張メッセで開催された。
 クリティカルシンキングは,アメリカでは1989年にNLN(全米看護連盟)が専門学校レベルで活用する声明を発表,翌90年には短大課程に,さらに91年には学士課程での教育に取り入れる声明文を発表し,以降アメリカでの看護教育カリキュラムにはクリティカルシンキングが取り入れられるようになっている。
 ロザリンダ・アルファロ・ルフィーヴァ氏は,『基本から学ぶ看護過程と看護診断』(江本愛子監訳,医学書院刊)の著書でも知られるが,現在「Teaching Smart Learning Easy」を主宰し,全米各地で看護過程,看護診断を正しく活用するために最も大切な基礎であるクリティカルシンキングを中心としたセミナーを展開している。今回は,同様のセミナーを日本で開催すべく,リハビリテーション看護専門ナースとして教育,臨床,管理,研究面で活躍しているテリー・S・パターソン氏と同行し初来日した。(1)効果的な患者中心のケアを提供する過程での看護診断とケースマネージメントの役割について述べる,(2)クリティカルシンキング(批判的思考)をすると,看護過程を使って急速に変化する世界に適応する能力がいかに向上するのかを説明する,(3)臨床ナースや看護学生が効果的に看護過程と看護診断を使うために役立つ方略を明らかにする,(4)講師と参加者との対話の機会を提供することを目的として開催されたセミナーへは,教育関係者などを中心に全国から約400名を越える参加があった。
 セミナーでは,初日に「看護診断と看護過程を今日の実践と教育にどう使うか」,「クリティカルシンキングとは? 看護過程との関連は?」,「看護診断とアメリカで注目されはじめたケースマネージメントをめぐって」の講演が行なわれ,翌日にはアルファロ氏が「クリティカルシンキング方略:人間の最大可能性を引き出す」を講演。その後,講演に対する質疑・応答の時間が設定された。さらに最終プログラムとしてのパネルディスカッションでは,「早期子宮癌手術を受けた女性」の事例が提示され,数少ないデータからクリティカルシンキングを使いどう診断を下すのかについて,指定回答者とともに参加者自ら考えることの実習を行なった。アルファロ,パターソン両氏は参加者らの質問に対し,適切でわかりやすいアドバイスやコメントを行ない,全米でも支持されている一端をかいま見せる,有意義なセミナーであった。
 なお,アルファロ氏の書『アルファロ看護場面のクリティカルシンキング』は医学書院より刊行,また江本愛子氏(三育学院短大教授)と野地有子氏(聖路加看護大助教授)との対談「クリティカルシンキング」は,本紙第2213号(10月28日付)に掲載されるので参考にされたい。