医学界新聞

第1回日本難病看護学会が開催される

難病者が抱える問題に看護者はどう関わるのか



 第1回日本難病看護学会が,さる8月24-25日の両日,川村佐和子会長(東医歯大教授)のもと,東京の日赤看護大学講堂で開催された。
 研究会から数え通算18回となる第1回学術集会のメインテーマは,「難病者が直面する課題とケアコーディネーション」。このテーマに沿って,講演「難病者が直面する課題に対応する保健活動」(都八王子保健所 近藤紀子氏)やシンポジウム「難病者が抱える問題とケアの開発」(座長=都神経研 牛込三和子氏,川崎難病患者会 柴田年世氏),一般演題14題の発表が行なわれた。なお参加者は208名。

在宅療養の支援を望む難病患者・家族

 特別講演で近藤氏は,難病患者に接してきたこれまでの経験から,患者が抱える課題やそれに対する保健活動を論じ,40年間施設入所を拒否してきた重症心身障害者の親子の事例をあげ,「障害者(児)を持つ親は,普通の子育てを知らないままに,慢性疲労を抱えている人も多くいる」と指摘。「自分が生活したい場所で生活するために,専門家がそれぞれの役割を担い支援するシステムが必要になろう」と提言した。
 一方シンポジウムでは,患者,福祉,施設看護,訪問看護の立場から4名が登壇。最初に河野都氏(全国パーキンソン病友の会)が患者・家族の立場から発言。「看護婦の中にはパーキンソン病がどういう病気かを理解しないままにケアにあたろうとする人がいる」と苦言を呈し,「患者・家族との相互理解のもとにケアを進めるために,患者会の家族を講師に招くなど,看護婦の勉強会等を開催してほしい」と訴えた。
 また,福祉の立場からは飯塚有希子氏と清水この美氏(府中市民福祉公社コーディネーター)が,同公社の概要や仕組み,サービスの実態を報告。公社は60歳以上の利用会員616名を,協力・賛助会員1230名で支えている。両氏は44歳のALS(筋萎縮性側索硬化症)患者,およびその家族との関わりを事例紹介。行政やボランティアなどとネットワークを図りながら行なった在宅支援活動の問題や課題を述べた。
 さらに町田恵子氏(国療千葉東病院)は,在宅難病患者の短期入院を取り入れた在宅支援について,その現状や受け入れ態勢,今後の課題などを実例をあげて紹介。町田氏は,「短期入院は医療的支援だけでなく,介護ケア者の疲れの癒し,生活行動の一時的拡大を図るための家族支援でもあり,療養環境の見直しも目的」と述べた。
 最後に訪問看護者からの立場で新出よしみ氏(在宅看護センター愛)は,実際の訪問看護例を提示しながら,「多くの介護現場は,高齢者への介護が一般的であるが,難病患者の家庭においては,発病年齢が30~40歳代が多く,介護を担うのは患者よりも高齢者であったり,子どもたちも年少の場合が多い」ことが特徴と述べた。

難病の子どもたちの夢を叶える組織

 一般演題の発表では,ALSやパーキンソン病に関するものが多い中,阿部敦氏(松下政経塾生)は,自身は医療者ではないと断りながら,「Make-A-Wish(MAW)の概略とその活動」を発表,会場の注目を集めた。MAWとは,アメリカをはじめとする世界14か国で難病の子どもたちの精神的ケアを行なっている国際的な民間団体であり,「子どもたちが心から願う夢を必ず叶えてあげる」ことを目的とする団体。阿部氏は「子どもたちの夢実現は,闘病意欲につながるもの」と述べ,活動の実態を以下のように紹介。対象となる年齢は3~18歳の医学的に難病と定義される子どもたちで,アメリカ成人の9割はMAWの活動を知っており,それを支えるボランティアが常時1万1000人いる。設立以来3万7000件,1995年で5807名の夢を叶えてきたが,その夢は(1)実際に何かを体験する,(2)憧れの職業を体験する,(3)憧れの人に会う,(4)旅行に行くなどである。
 日本支部(MAW-J)は1992年に設立され,「ディズニーランドに行ってミッキーマウスに会いたい」「マイケル・ジャクソンに会いたい」など,これまでに17件の夢を叶えている。これらに要した費用は平均36万円で実現までの待ち時間は平均90日間であったが,患者の費用は原則無料。MAW-Jの連絡先は,TEL(03)3345-1745/FAX(03)3345-1798 。
  なお学会の今後のあり方については時期および地方での開催を理事会で検討,次回は新潟市で開催されることが報告された。