医学界新聞

The Art and Science of Midwifery Gives Birth to a Better Future
“助産のアートとサイエンスはよりよい未来を生み出す”を大会テーマに

第24回国際助産婦連盟(ICM)大会開催


 世界の81か国から2500名,日本からも250名の助産婦が参加して一堂に会した第24回国際助産婦連盟大会(The 24th Triennial Congress of The International Confederation of Midwives)が,さる5月26-31日,ノルウェーの首都オスロ市において開催された。
 このICM大会は3年に1度開かれているが,第1回大会は1922年にまでさかのぼるほど長い歴史を持っている。前回はカナダのバンクーバー市で,また前々回は神戸市で開催されたが,特に神戸大会には6000名が参加し,日本の助産婦にとっては世界に目を開く大きな契機となった。
 今回の大会テーマは“助産のアートとサイエンスはよりよい未来を生み出す”。
 開会式のオープニング・レクチャーにおいて,ICM会長のソーニャ・シューリ氏(ノルウェー助産婦協会)は,助産を実践していく上でアートとサイエンスがいかに大切なものであるかを強調し,「世界中の女性が母親になる時に,助産婦は尽力を惜しまない」と高い志を述べた。

母子の安全性と女性の主体性の尊重

 5日間にわたる本会議では,連日午前中に基調講演が行なわれた他に,共通テーマで5つのセミナーが設定された。
 まず基調講演では,世界各国でリーダーの役割を担っている5人の演者が1人ずつ登壇し,ICMがこの10年間継続して課題としているテーマ母子の安全性と出産する女性の主体性の尊重に即した内容で講演。現代の世界と助産婦の役割について,参加者全員に深い考察を促した。
 また,5つのセミナーのテーマは,(1)生殖における健康,(2)助産と出産における文化的差異,(3)心理学的側面,(4)生理学的側面,(5)助産婦の教育と研究。5会場に分かれて,いかに母子を守るかについて今日的な報告と討論が繰り広げられた。
 そして午後は,小会場に分かれて一般募集演題が発表された。口演での発表は184題(うち日本人の発表は22題),ポスターセッション158題(同22題),フィルムセッション8題(同1題)の他に,さらに10テーマ(教育,倫理,法規,情報と分類,研究,メディア,職能団体の結成,医療介入の脅威,新生児に不可欠なケアの実践,HIV/AIDS)についてワークショップが行なわれた。
 日本人の発表者は合計28人に及び,それぞれが日頃の研究成果を立派に発表。世界の助産婦と成果を交換し合った。

ICMは世界の人々へのビジョンを持っている

 ICMは常にWHO,ユニセフ,FIGO(世界産科婦人科連合)と連携を保ちつつ“Safe Motherhood" 活動プログラムを追求している。今大会においても,本会議に先だってWHO,ユニセフとの共同ワークショップを開催したが,今回は特に初めての試みとして「開発途上国のコンサルタント育成のための合同ワークショップ」も開かれ,今後の方向性をさらに明確にした。
 また,世界には経済的な事情からICM大会への参加がままならない国もある。ICMにはそうした国を支援することを目的として,「スポンサー・ア・ミッドワイフ」という,先進国が発展途上国の助産婦を経済的に援助する制度があり,この制度の恩恵に浴して今回のオスロ大会には合計60人の助産婦が参加することができた。
 ちなみに,日本でも日本看護協会はパプア・ニューギニアの,日本助産婦会はタンザニアの,日本助産学会は南アフリカ共和国のスポンサーになっている。
 シューリ会長は開会式の挨拶において,「ICMは世界の人々に対してビジョンを持っており,このビジョンはアクションを伴う」と述べたが,“女性の幸福は人類の幸福へつながる”と提唱するICMの理想実現への戦略は,全世界の人々が共有すべき課題とも言えよう。
 次回の第25回ICM大会は,1999年5月22-26日に,フィリピンのマニラ市において開催される。
(なお,同大会の詳細は医学書院発行雑誌「助産婦雑誌」9月号に掲載予定)