医学界新聞

夢と感動を創造するナースたち

第1回日本看護サミット'96が開催される



 第1回日本看護サミット'96 in GIFU(実行委員長=岐阜県看護協会長 熊崎多冨美氏)が,さる6月13-14日の両日,「21世紀の社会が求める看護-夢と感動を創造するナースたち」をテーマに,岐阜市の長良川国際会議場および岐阜ルネッサンスホテルを会場に開催された。
 同サミットは,保健・医療・福祉の現場で看護職は何を国民に提供するのか,21世紀の社会が求める看護を明らかにし,看護職が果たす機能と役割を自覚と責任を持って提言することを目的とし,厚生省,日本看護協会の後援を得て実施されたもの。
 開会式で,主催者の梶原拓岐阜県知事は,県立看護大学の設立構想を明らかにするとともに,「病院経営のレベルアップを図ることが急務とされているが,そのキーパーソンとなるのがナース。経営感覚を持つことも看護職の役割である」と挨拶。また見藤隆子氏(日本看護協会長)は,「大きな知恵と力を与えてくれるサミットは,参加者に刺激を与えるだろう」と今サミットへの期待を述べた。


世界が期待する日本の看護

 初の日本看護サミットは,WHO保健人材部主任看護研究員のミリアム・J・ハーシュフェルド氏の基調講演に始まり,4つの分科会と2つのシンポジウムが2日間にわたり行なわれた。
 ハーシュフェルド氏は「世界の動向と今後の課題」をテーマに講演。「誰もが健康であることがWHOのビジョンであり,世界の人々すべてが健康的な生活をおくるためには国際的レベルで健康確保の保障をしなくてはならない」とWHOの基本理念を紹介。その障害となるものとして,世界的な景気後退を経済的理由にあげ,さらに世界的傾向として保健予算よりも軍事予算が高いことを指摘,健康に対する低い認識を憂える発言を行なった。
 また,WHOに加盟する109か国によって決議されたWHOの2000年までの決定プログラムや保健医療に関わる世界情勢を解説。その中で,高齢者参加型の社会,障害を持つ人(子)がともに生きられる社会を構成するには,看護婦の力が必要であることを示唆するとともに,発展途上国での中絶・HIV感染予防のためにも男子以上に女子への保健教育が必要と指摘した。
 さらに「看護婦の力量が試される時代。急激に変化する社会の中での看護婦の役割や対応を,世界的に視野を広げて考える必要がある。世界の多くの看護婦たちは,リーダーとしての日本の看護界に注目している。計画,教育,啓蒙などについても日本に学びたい」と結んだ。

看護界のトップレベルが一堂に

 初日の午後に開催された分科会には,それぞれの分野で活躍している看護界のトップレベルが一堂に会した。(1)病院看護分科会「看護職副院長のインパクト-先駆者たちのチャレンジ」では,高橋美智氏(日本看護協会常任理事)をコーディネーターに,プレゼンターとして,日本初の看護職副院長に就任した石垣靖子氏(東札幌病院)をはじめ,井部俊子氏(聖路加国際病院),青木孝子氏(公立富岡病院),島袋豊子氏(浦添総合病院),そして地元から高木美智子氏(県立岐阜病院)らの看護職副院長が出席し,副院長としての意義,役割,抱負,課題について討議。「副院長の役割モデルは,看護職にとってもプラスに働いている」(石垣氏),「看護職副院長の増加は時代の趨勢。管理者はためらわずにポジション確立を図ってほしい」(井部氏)などの意見が出された。
 また(2)訪問看護分科会「地域社会が求める訪問看護」では,コーディネーターの島崎佐智子氏(前日本訪問看護振興財団常務理事)以下,川村佐和子氏(東医歯大教授),千田徳子氏(北海道在宅研究事業団副理事長),加藤ハマ子氏(若林訪問看護ステーション所長),竹澤良子氏(滋賀県野洲町総合福祉センター),山口昇氏(公立みつぎ総合病院管理者)が出席。それぞれの特性を活かした訪問看護ステーションの実績と課題を軸に,訪問看護を担当する看護職のあり方,課題等について話し合われた。
 さらに(3)ホスピス看護分科会「ホスピスケアと看護」では,季羽倭文子氏(ホスピスケア研究会代表)をコーディネーターに,丸口ミサエ氏(国立がんセンター東病院),村松静子氏(日本在宅看護システム代表),磯崎千枝子氏(上尾甦生病院ホスピスコーディネーター),恒藤暁氏(淀川キリスト教病院ホスピス長)が登壇。恒藤氏による「ホスピスの歴史,めざすもの,今後の課題」のレクチャー後,それぞれの経験が語られるとともにホスピスケアと緩和ケアの違いなどを論議。また,この分科会の中で岐阜県にホスピス設立構想があり,県議会で承認されたことが明らかにされた。
 (4)看護教育分科会「大学における看護学教育の果たす役割」においては,コーディネーターの南裕子氏(兵庫県立看護大学長)をはじめ,吉田時子氏(聖隷クリストファー看護大学長),樋口康子氏(日赤看護大学長),波多野梗子氏(愛知県立看護大学長),平山朝子氏(千葉大教授・前看護学部長)ら,看護系大学の看護職学長・学部長がプレゼンターとなり,大学での看護教育と現場での看護実践はどうつながるのか,また大学院での教育は何をめざし,看護に何を与えるのかなどが討議された。

看護の質が問われる時代に

 2日目のシンポジウム「21世紀の社会が求める看護」には,座長に久常節子氏(厚生省健康政策局看護課長)を迎え,紙屋克子氏(筑波大教授),黒岩祐治氏(フジテレビ報道局),見藤隆子氏,小田誠一氏(岐阜県衛生環境部長)の4人が登壇し,看護料と診療報酬などを巡って論議された。久常氏は最後に,「現在看護婦の充足率は93%だが,数年後には95%に到達する。そうなれば看護婦不足の感はなくなるはず。100%の充足となった時に最も看護の質が問われることになるだろう」と述べた。
 なお次回の看護サミットは,石川県の主催で開催される。