医学界新聞

“地域社会に応えよう”をメインテーマに

第19回日本プライマリ・ケア学会開催



 第19回日本プライマリ・ケア学会が,6月14-15日の両日,福原照明会長(広島県医師会長)のもと,広島市の広島国際会議場で「地域社会に応えよう」をメインテーマに開催された。
 プライマリ・ケア学会は,地域医療・在宅医療の進展に伴い,医師をはじめ歯科医師,薬剤師,看護婦,栄養士,医療ソーシャルワーカーなどすべての医療職が参加する学会となっている。今回も地域社会の要求に応える医療をいかに提供していくかを中心に幅広い論議がかわされた。

地域社会に応えるために

 「地域社会に応えよう」と題して会長講演を行なった福原氏は,「ハーバード大で国民の医療に対する満足度を調査したが,満足度はカナダ94%,ドイツ92%,アメリカ88%,イギリス87%なのに対し,日本は67%と著しく低い結果だった。これは一般社会で行なわれている説明,説得,同意,などが医療の世界で行なわれていないためではないか」と問題提起した。その上で地域社会に応える医療を進めていくには,(1)国民皆保険の中で,国の介入をできるだけ限定する,(2)診療内容の自由をできる限り確保する,(3)保険の画一性を排除し,制度の多様性・柔軟性を検討する,(4)シビルミニマムは必ず確保する,(5)医療の公共性・非営利性を確保することが必要であると強調した。

21世紀に向けての医療を考える

 学会では一般演題の他,(1)21世紀に向けての日本の医療を考える,(2)21世紀の福祉に期待する,(3)介護保険制度の発足と地域保健法で在宅医療はよくなるか,(4)NGOの広場-医療従事者の社会的使命に応える,の4題のシンポジウムが行なわれた。
 「21世紀に向けての日本の医療を考える」では,青山英康氏(岡山大)が「世界で最も安い医療費で世界最高の平均寿命や低い乳児死亡率など最高のアウトプットをしてきたが,経済の低迷と国際的に例を見ない高齢化社会を迎え,保険医療制度の危機が叫ばれている」と発言したのをはじめ,「3年前まで黒字だった健康保険組合の財政は急速に赤字を拡大し,一般の企業だったら倒産という事態になりかねない状況。医療費の膨張により日本の医療は構造的な変化を求められている」(日本臨床内科医会長 神津康雄氏),「医療従事者と患者の信頼関係の回復をするためには,世界一厳しい医療費抑制政策を見直すことが不可欠」(日本社会福祉大 二木立氏),「21世紀の社会がどうなるのか,その中で医療のマーケットがどうなるか語らなければならない。2000年には450万人の医療・福祉要員が必要とされるが,人的な確保とともに経済的基盤も整えなければ」(河北総合病院理事長 河北博文氏)など,医療保険制度や医療費支払いシステムを抜本的に見直す必要があるとの声が強く出された。