医学界新聞

第8回日本アレルギー学会春季臨床大会開催

アレルギー疾患治療の治験におけるインフォームドコンセント

 第8回日本アレルギー学会春季臨床大会が,飯倉洋治会長(昭和大教授)のもと,さる4月25-27日の3 日間,横浜市のパシフィコ横浜で開催された。
 今学会では,会長講演や特別講演の他,シンポジウム13題,パネルディスカッション5題,さら に初めての試みとして「ミート・ザ・プロフェッサー」(10題)が企画された。このミート・ザ・プロフェッ サーでは「予防接種とアレルギー」から「アポトーシス」「遺伝子治療」までを網羅する基礎,診断,治 療の10テーマ各2,3題を,それぞれの第一人者が講演した。
 また,三河春樹氏(関西電力病院長),小林節雄氏(群馬大名誉教授),宮地良樹氏(群馬大教 授)の三者が座長を務めた「インフォームドコンセントとアレルギー疾患治療の治験のあり方」と題する ワークショップも開催された。本号では,臨床治験とGCP(医薬品の臨床試験の実施に関する基準)をめ ぐりその必要性と問題点,さらに今後のあり方についても論議されたこのワークショップの内容を紹介す る。

治験は必要,ではどうするか

 内科医の立場で大石光雄氏(近畿大助教授)は,医師,患者双方に実施した治験におけるインフォー ムドコンセント(以下IC)の実態調査結果から,医師患者関係について述べた。それによると「治験とい う言葉を知っているものの,ICまで関心を持っている患者は5~6割であり,27~44%の患者が医師からの 説明が専門用語でわかりにくい,不十分と感じた」と報告。「患者は疾患の回復のための新薬開発に期待 も持ち治験に臨んでおり,今後は十分な説明と情報公開が必要。また,医師・患者ともに信頼の持てる社 会環境整備が必要」と提言した。
 一方土橋邦生氏(群馬大)は,治験の同意を得る際の問題について,学会評議員を対象にアンケー トを実施。「自分が治験を受ける側になった時に75%の人が治験を承諾すると回答しているが,家族の場 合だと断る率が高くなる。治験は患者にメリットがあるかの質問には60%の人がないと回答,メリットを 与えるべきとする人が80%あった」。さらに「治験を行なう医師の資格として学会認定医・専門医である ことを条件とすべき。また治験薬が多いのが問題である,治験薬を整理すべきとの問題意識は大多数の医 師が持っている」と報告した。
 江頭洋祐氏(公立玉名中央病院長)は,GCPにおいて「患者の負担が大きいわりには現実的メリッ トがない。医師も勤務時間外に自己犠牲的労務を強いられる」ことを指摘し,「今後は協力患者への具体 的報酬の実施,治験担当医の労務保障と資格化が必要」と課題を呈した。
 さらに豊島協一郎氏(大阪府立羽曳野病院部長)は小児科医の立場から,「小児科領域では保護 者が代理となる。患者の治療上のメリットを説明するとともに,患者の権利を守るためにもICは必要」と 強調。また堀内龍也氏(群馬大病院薬剤部長)は,「統一GCPが日・米・EUの各国でまとめられ,ガイ ドラインが作成されつつあるが,アメリカなどでは医薬品の専門家として薬剤師は高い評価を受けている。 治験においては中立性,客観性を持った倫理的職業人であることが薬剤部の役割であり特性である」と述 べた。
 これらの報告を受けて阿部重一氏(厚生省薬務局GCP査察官)は,「中央薬事審議会への治験申 込み件数は年間1200~1300件あるものの,文書同意は40%前後。今後のGCPの改定時には,文書同意の義 務化が盛り込まれるであろう。また未成年者の場合には,法定代理人とともに被験者本人の同意も人権を 守る意味で必要となる。さらに,第三者による治験審査委員会の設置や治療調整委員会の役割分化などが 進められるだろう」との見解を示した。
 最後に飯倉会長が特別発言。治験の必要性を訴えるとともに治験の今後に望むこととして「国も 治験に最初から関与する,患者側には治験参加費を支払う,治験参加医師の評価基準を作成する,治験開 始を病院でもオープンにして患者が積極的に相談できるよう病院全体への啓蒙を行なう」などをあげ, 「治験を行なう背景にはボランティア精神も必要である」と結んだ。
 なお,日本でもGCPのガイドラインの作成が進められているが,明年7月にブリュッセルで開催 される第4回ICH会議(日・米・欧新医薬品承認審査ハーモナイゼーション国際会議)において,医薬品 の品質,安全性,有効性を調和,統一する新たなICH-GCPが決定される予定である。