医学界新聞

資料  厚生省「介護保険制度試案」(抜粋)

1996年5月15日(於:第40回老人保健福祉審議会)


施行準備と介護サービスの基盤整備について

2.介護サービスの基盤整備
2)施設整備の促進方策
・介護サービス基盤の整備を進めるため,介護力強化病院等の療養型病床群への転換,養護老人ホーム の特別養護老人ホームへの転換等を進める。療養型病床群のあり方を検討し,施設要件や転換促進方策の 見直し等を行なう。

介護保険制度について

1.保険者
1)保険者は,市町村および特別区とする。

2.被保険者
1)基本的な考え方(介護保険と障害者福祉の役割分担)
・高齢者介護が大きな社会問題となっている状況を踏まえ,介護保険制度は,老化に伴う介護ニーズに 適切に応えることを目的とする。障害者福祉(公費)による介護サービスについては,障害者プランに即 して,引き続き充実を図るものとする。
2)介護保険における被保険者の範囲
・介護保険が対象とする老化に伴う介護ニーズは,高齢期のみならず,中高年期においても生じ得るこ と,また,40歳以降になると,一般に老親の介護が必要となり,家族という立場から介護保険による社会 的支援という利益を受ける可能性が高まることから,40歳以上の者を被保険者とし,社会連帯によって介 護費用を支え合うものとする。
3)被保険者の区分
・給付や負担面の違いを踏まえ,被保険者は,65歳以上の者(第1種被保険者)と40~64歳の者(第2種 被保険者)に区分する。
(1)介護保険においては,要介護リスクの高まる65歳以上の高齢者が基本となる。40~64歳の者は,自ら が要介護となるリスクが低く,しかも,老化に伴う介護のケースに限定される。
(2)負担の面では,高齢者は中心的な受給者であることから,その居住する地域で受けた介護サービスの 水準に応じて保険料を負担することが考えられる。
 これに対し,40~64歳の者は,社会的扶養の観点から費用を負担する要素もあることから,全国共通 のルールによって費用を負担する仕組みとする。

3.介護給付
1)受給者
・被保険者であって,老化に伴い介護が必要となった者を受給者とし,いわゆる虚弱老人も寝たきり予 防等の観点から必要なサービスを提供する。
 第1種被保険者の場合は,高齢者であることから,その原因を問わず要介護者は一般的に介護保険の 対象となる。
 第2種被保険者については,老化に伴う介護という観点から,具体的な対象範囲を定める(それ以外 のケースは,障害者福祉の介護サービスの対象とする)。
2)介護給付の受給手続
(1)要介護認定
・被保険者が介護保険の給付を受けようとする場合には,保険者に申請して,介護が必要な状態にある ことの認定を受けるものとする。認定は,要介護認定機関が公平かつ客観的な基準に従い,専門家の合議 によって審査した結果に基づき保険者が決定することにより行なう。
(2)ケアプランの作成
・要介護認定を受けた被保険者は,自らの意思に基づき,利用する介護サービスを選択することができ る。
・被保険者は,自らの意思に基づき,ケアプラン(介護サービスの提供に関する計画)の作成をケアプ ラン作成機関に依頼できる。ケアプラン作成機関においては,専門家が被保険者や家族の相談に応じ,ケ アプランを作成の上,実際のサービス利用につなぐ。ケアプラン作成機関は,市町村が設置するもののほ か,在宅介護支援センター,訪問看護ステーションなどの在宅サービス機関,介護施設,医療機関であっ て一定の要件を満たすものが設置できる。
3)介護給付の内容
(2)利用者負担
・介護サービスの利用者負担は,介護給付の対象となる費用の1割とする。また,施設については,食 費は利用者負担とし,日常生活費は給付対象外とする。ただし,負担額が著しくならないよう,医療保険 の高額療養費と同様の仕組みを制度化する。
(2)対象となるサービス
【在宅サービス】
ア)ホームヘルプサービス,イ)デイサービス,ウ)リハビリテーションサービス(デイケア,訪問リ ハビリテーションを含む),エ)ショートステイ,オ)訪問看護サービス,カ)福祉用具サービス,キ) 痴呆性老人向けグループホーム,ク)住宅改修サービス,ケ)訪問入浴サービス,コ)医学的管理等サー ビス,サ)有料老人ホーム,ケアハウス等における介護サービス,シ)ケアマネジメントサービス
【施設サービス】
ア)特別養護老人ホーム,イ)老人保健施設,ウ)療養型病床群,老人性痴呆疾患療養病棟その他の介 護体制の整った施設

4.費用負担
1)費用負担の区分
(1)第1種及び第2種被保険者の負担:介護給付費総額の1/2
(2)公費負担:介護給付費総額の1/2
2)第1種被保険者の費用負担
・第1種被保険者は,市町村が,当該市町村のサービス水準に応じて定めた保険料額を負担する。
・保険料は市町村が徴収するものとし,老齢年金受給者のうち,一定の基準に該当する者については, 年金からの特別徴収を検討する。保険料の納付義務者は被保険者本人とし,世帯主および配偶者を連帯納 付義務者とする。
・保険料未納者については,給付率の引き下げ等の措置を講ずる。
3)第2種被保険者の費用負担
(1)保険料の算定方法と医療保険者による一括納付
・第2種被保険者は,自らの介護リスクに備えるとともに,社会的扶養の考え方に基づき費用を負担す る。第2種被保険者は就労や所得形態が多様であることから,確実かつ効率的な徴収を確保するため,各 医療保険者が自らの保険に加入している第2種被保険者の負担すべき費用を一括納付する方法を採用する。
・医療保険者が一括納付する金額は,国が介護給付費総額に基づき定めた第2種被保険者の基準負担額 に,各医療保険に加入している第2種被保険者数を乗じた金額とする。各医療保険者は,医療保険各法の 定めるところにより,これに係る費用をその被保険者から介護保険料として医療保険料と一体的に徴収す る。
・被用者保険については事業主負担,国保等については医療保険各法に従い国庫負担を行なうものとす る。
(2)介護保険者への交付(高齢化率の相違に係る調整)
・各医療保険者が一括納付した第2種被保険者の保険料は,全国レベルでプールし,市町村の高齢化率 の違いによる第1種被保険者の保険料負担の格差が調整されるよう,介護保険者に対しその介護給付費の うち第2種被保険者の負担割合に相当する額を基に交付する。

5.施行および検討
1)円滑な施行を目指し,必要な準備期間を置くため,平成11年4月から実施に移す。この場合,在宅サー ビスを先行実施し,社会的入院の解消を図りつつ,施設サービスについては5年後(平成13年)を目途に 実施する。
3)家族介護に対する現金支給は,原則として当面行なわないものとする。