第2192号 1996年5月27日

Vol.11 No.4 for Students & Residents

医学生・研修医版[4]1996. MAY


第90回医師国家試験合格者発表される
合格者数8088人,合格率89.3%に
合格者数に占める女子の割合1/4超す


 医療関係職の国家試験合格者が相次いで発表される中,さる4月19日,第90回医師国家試験(3月 16―17日実施)の合格者が厚生省より発表された。

女子の合格率は93.0%

 今回の合格者数は,受験者9057人に対して8088人。合格率は89.3%(前回より3.3ポイント増)で,第 87回(合格率90.0%)をピークに2年連続の低下傾向から上昇に転じた。ここ10年では第2番目の合格率に なっている。これで第1回から第90回までの累積合格率は83.2%となる。
 この結果を男女別にみると,男性が受験者9057人中合格者6048人(合格率88.1%),女性が受験 者2193人中合格者2040人(同93.0%)で,合格者に占める女性の割合は25.2%と,初めて1/4を超える数 字となった。
 一方,大学別の合格率(下表参照)では,筑波大の100%を筆頭に,自治医大の98.1%,群馬大 の97.9%が続くなど,全大学で70%以上の結果を出している。
 合格者の最高年齢は昨年卒業した58歳の男性。また新卒・既卒別の内訳は,新卒者7783人中7257 人が合格(合格率93.2%),既卒者では1274人中831人が合格(同65.2%)となっている。

受験者の感想

 合格発表当日,発表会場の1つである厚生省講堂には多くの受験者がつめかけ,合格者名簿で自らの 合否を確認。合格したことがわかると友人同士手を取り合って歓声をあげる姿も多く見られた。
 発表会場で今回の国家試験の感想を聞いてみると,「画像に関する問題がキーポイント。マイナー な問題も多かった 」,「内分泌や電解質に関する問題が多く,出題傾向に偏りがあったように思う」な どの意見があった。

●第90回医師国家試験学校別合格者状況

●医師国家試験の回数別合格者数

●医師国家試験男女別合格者数等の推移

●各種国家試験の結果一覧(発表日順)


1996 医師国家試験合格体験記

暗記ではなく理論をつかむ勉強を

匿名(鳥取大卒)

 東京都の中心部分,オフィスビルの立ち並ぶ中に私の研修先,虎の門病院はあります。ここに今 立って,「青春の夢に忠実であれ」というシラーの言葉を強く思います。医師として世に出て病と戦い, 知恵のかぎりを尽くして病める者を助けることは私の青春の夢でした。皆さんも国試を乗り越え,自分の 天職を立派に果たしていきましょう。国試終了後,仲間や恋人と酒を酌み交わし感じる充実感は何ともい えないものです。皆さんも経験して下さい。

今年の国試の傾向と対策

 さて,今年の国試の特徴は,(1)易問と難問がクリアーに分かれていること,(2)選択肢の質が変わっ てきていることだと思います。易問を取りこぼさなければ合格点は出ますが,余裕を持って合格(7割5分 以上)しようと思うと,しっかりとした病態生理の知識が必要です。また,選択肢が医学生の知識の辺縁 を突くものになっており,過去問の出題事項は常識とみなし,さらに踏み込んだ出題がなされている感が します。したがって,対策は,『イアーノート』(メディック・メディア)の青字はもう常識として知っ ておくこと。その上のレベルの問題には病態生理の知識を働かせて試験場で「考えて」理論的に解答を導 き出すことです。要は暗記だけでは余裕を持って合格できないということです。
 具体的には,『国試内科学』(医学評論社)の通読をお勧めします。この本のすべてを暗記する のではなく,理解し,できるだけ他の事項と関連させ,そして理屈をつけてどんどん読み進め,読み通す ことが大切です。循環器,内分泌などは,理論をつかめば暗記する事項はほとんどなくなるし,応用が効 きます。
 その後,テキストを『イアーノート』に変え,過去問を2~3回解けばよいと思います。ちなみに 私の国試の得点は87~85%(3社の解答にて)でした。
 過去問について特筆すべきことがあります。それは,新しい過去問2年分が特に重要であり,本 番1週間前には必ず復習しておくことが大切,ということです。88回と89回と今年の問題は非常に似てお り,ほぼ同じ問題も散見されます。私がこれに気付いたのは本番1週間前でしたが,やっておいてよかっ たと本番中に思ったものです。一般問題は3回,臨床問題は2回で十分でしょう(10年分のみ)。
 また,最近の国試ではトピックス的な問題(インターフェロンやミトコンドリア脳筋症)がわり とありますが,これには模試で十分対応できます。新傾向をよく研究した出題であり,自分の勉強のどこ が不十分かがつかめ,学習の指針になるほか,時間配分や自分がどれくらい得点できているのかカンでわ かるようになるため,本番に余裕を持って臨めます。

臨床病院の受験を

 長い国試勉強を続けるためには,自分を刺激してくれる人物に出会うことも大切です。人は憧れるも のがあって初めてそれに近づこうとします。私は夏期実習を利用し,学外へ出てみることをお勧めします。 私は虎の門病院で実習させていただきましたが,部長の先生方をはじめ,レジデントの先生方の姿勢に, 一流とはどういうことか初めて感じた気がしました。猛烈なやる気とバイタリティーに溢れ,多忙ながら も積極的に多くのものを修得しようとする態度に志の高さを感じました。
 実習後,その出会いに魅せられた私は,11月の選抜試験まで国試内科学を5回解き,試験を受け ました。皆さんにも臨床病院の受験を真剣にしてみることをお勧めします。虎の門病院,三井記念病院な どの問題は記述式で非常に勉強になります。主要な症候(胸痛,腹痛,浮腫など)を自分が外来で実際に 見たとして鑑別すべき疾患をあげ,検査,診断,治療計画をきちんと立てられるようにすることで,総論 の力がつきます。また国試の過去問も最終的には選択肢をかくしてしまい,それでわかるレベルにするこ とが大切です。
 以上ですが,国試は大切です,しかし最後の学生生活でもあります。本番前といえど,1日のう ち何時間かは映画を見たり,恋人と会ったりする余裕を持てるよう,早め早めに勉強を進めて下さい。卒 業式後,涙はあっても,お互いにとって前向きな別れができるよう,仲間たちとともにがんばって下さい。


過去問で十分,将来を考える時期に

匿名(山梨医大卒)

 医学部の最後の仕上げに控えている医師国家試験は,医師として仕事をするための登竜門である。 誰もが自分なりの医師像を思い描きながら医学部をめざし,入学し,学んできたことの総決算でもある。
 試験の準備は3日漬けですむようなものではないから,時間をかけた準備が求められる。それに 対する気力を維持するためには,自分が医師になりたいという気持ちを再確認しながら,モチベーション を高めておくことが最も大切だと思う。
 6年間の学生生活では,講義や実習,クラブ活動その他の楽しみに時間を費やしながら,勉強を しっかり積み重ねてきた人も,また横に置いてきた人もあるだろう。6年生の後半になれば業者の模擬試 験の結果に一喜一憂しながら卒業試験や就職活動に追われる日々を送ることになり,そして国試を迎える。

時間を有効につかって

 1年間以上,国試の勉強にどっぷりつからなければ合格しないわけでもなく,国試で求められる学力 を自分なりに解釈して,勉強を重ねたらよいと思う。それには過去の問題を網羅して勉強しておけばよい し,参考書や問題集は自分の気に入ったものを選べば問題はない。偏らずにやり遂げるプランをこなせば 十分である。なぜなら大多数の人は合格する試験であるから,皆のできる問題ができればよいと割り切っ て考え,過去の問題をしっかり勉強しておくことが最小限の労力で合格を勝ち取れる方法のようだ。
 勉強会というスタイルがどこの大学でも浸透しているが,私の組んだ仲間うちでは,とにかくダ ラダラせずに過去の問題を繰り返しこなしていくことに重点を置いた。臨床問題では理解を優先して時間 をかけたが,いわゆる一般問題などは知識獲得が基本であって,ノルマ量と勉強する時間を決めて進める 勉強会のスタイルは,時間を無駄にしなかったし,余った時間を余暇に回すことができた。これは気分転 換にもなるし,一石二鳥だったように思う。
 夏休みも,勉強に合わせて無理に集まらず,各自の活動,サークルや旅行,病院実習などの合間 に調整した。私は,2週間は病院実習に使ったし,小旅行なども楽しんだ。仲間は富士山登頂に挑戦した。 この時期は卒後の進路について悩む時期でもあり,先輩を訪ねたり,医局訪問をしたり,忙しくしていた。
 年が明けてからも,家庭教師のアルバイトに出かけたり,ドライブに出かけたり,気分転換を図 ることも心がけて,マイペースで過去問を繰り返し勉強した。度重ねて間違える問題をノートに書き出し て整理して復習することは有効だった。またパソコン通信を利用して,仲間うちで質問のやりとりをした り,先生に質疑応答していただいたことも励みになった。そして最後の1か月は勉強に専念した。

幅の広い視点で

 あなたが6年生より若い学生なら,もっと講義や実習に目を向け,大学のカリキュラムをこなすこと に精一杯にならないよう積極的に取り組み,自分なりに考えて知識を経験で補う勉強をしたらよいと思う。
 卒後研修については,大いに議論されているし,少なくとも医師としてのキャリアは自分の責任 において組み上げるべきものだと感じた。私は春・夏休みには市中の病院実習に出かけて,いろいろな体 験をしたが,大学病院とは異なる環境に触れたことは大いに勉強になった。積極的な研修や活動をされて いる先輩医師による講演にも多くの刺激を受けたし,そうした内容に関する本も参考になった。
 少し先の将来のことを考えながら,学生生活を送ると,ひと味違った勉強  参考書に向かうの とは違う  ができる。こうした勉強の姿勢は,現代医療の方向を勉強することになるし,厚生省が実施 する試験である国試の出題傾向の変化を勉強することにも多少なりともつながっていくように感じられた。
 自分の未来を夢見ながら,ステップアップしていくように勉強すれば,あなたにも国試は通り過 ぎていくだろう。