医学界新聞

輸血医学・血液事業をめぐる幅広い議題

第24回国際輸血学会総会開催



 第24回国際輸血学会総会(24th Congress of International Society of Blood Transfusion:ISBT '96)が, 湯浅晋治会長(順大教授)のもと,3月31日から4月5日までの6日間,千葉市の幕張メッセで開催された。 国際輸血学会の日本での開催は1960年に次いで2回目。会議には70を超える国や地域から約1700名が参加, 連日活発な論議が繰り広げられた。
 3月31日に幕張メッセ国際会議場で行なわれた開会式では,湯浅会長の歓迎の挨拶,国際輸血学 会のW.G.エーケン会長の挨拶の後,高円宮憲仁親王が「安全で適正な輸血が強く望まれている今日,こ の会議によって最新の知識・技術が広まり,輸血医学,血液事業はもちろん,世界の医療の発展に大きく 貢献できるよう強く望みます」と会議への期待を述べた。
 また学術プログラムでは,500題のポスター発表,44題のシンポジウム,遺伝子治療,輸血によ るHIV感染など10題の特別講演など多彩な発表が行なわれ,連日熱心なディスカッションが展開された。
 今日の輸血療法は,全血輸血から成分輸血へ,また血液浄化療法,骨髄移植,末梢血幹細胞移植 へと画期的な進歩をとげてきており,血液事業においても血液製剤の自給体制の確立や,成分輸血や質の 高い血液製剤の供給などめざましく発展してきている。しかしエイズや同種免疫などさまざまな問題にも 直面しており,これに対して自己血輸血の普及,遺伝子組み替え技術による造血因子や血漿蛋白製剤の開 発・利用,人工血液の研究なども進展し,輸血医療は大きな転換期を迎えている。
 今回の会議ではこうした輸血療法・血液事業をめぐる課題として,(1)輸血製剤の有効適切使用, (2)輸血副作用とその予防,(3)輸血感染症,(4)輸血後GVHD,(5)輸血と免疫,(6)自己血輸血,(7)献血者募 集と安全対策,(8)血液製剤の開発と保存法,(9)造血幹細胞増殖とサイトカイン,(10)骨髄移植と造血幹細 胞移植,(11)血漿分画製剤と遺伝子組み替え製剤,(12)人工血液,(13)21世紀の輸血学などをテーマに,各 分野の専門家による幅広い論議が行なわれた。