医学界新聞

第71回日本結核病学会開催される

結核と関連領域での研究成果を報告



 第71回日本結核病学会総会(会長=国療東京病院長 片山透氏)が,さる3月21―22日の2日間,東京 の日本医師会館にて開催された。

新しい抗酸菌検査法の有用性を探る

 学会では,一般演題をはじめ,片山氏による会長示説「全国国立療養所における結核死亡調査」の掲 示,松本慶蔵氏(長崎大名誉教授)による特別講演「呼吸器感染症―急性,慢性のpathogenesis」,シンポ ジウム,ランチョンミーティングなどが行なわれ,結核や非定型抗酸菌症など関連領域の研究の成果が報 告された。
 このうちシンポジウム(1)「新しい抗酸菌検査法の診断治療における位置づけ」(座長=国療東埼 玉病院 青柳昭雄氏)では,検体中の抗酸菌のRNAを増幅して検出するMTD(Mycobacterium tuberculosis direct test)法と,DNAを増幅して判定するアンプリコア法を中心に,4人の演者と特別発言者の大角光彦 氏(国療埼玉病院)が報告。現状と問題点,将来性などについて話し合った。

HIV感染と結核

 時代の変遷とともに結核を取り巻く状況は変化しており,現在,世界的にエイズ患者の結核合併が問 題にされている。要望課題(8)「抗酸菌感染症とHIV」(座長=国療南横浜病院 藤野忠彦氏)では,4人 の演者が登壇し,自施設で経験した結核をはじめとするHIV感染者の抗酸菌症発症例の検討を行なった。
 この中で永井英明氏(国療東京病院)の発表した例では,6例中5例は結核を発病して初めてHIV 感染が確認されており,永井氏は「結核の罹患率の高い日本では,潜在的なHIV感染者が,結核の発病を 契機にエイズと診断される場合が今後増加すると考えられる」と指摘。特に粟粒結核ではHIV感染を疑い, 承諾を得て検査をすべきではないかとの考えを示した。
 また,藤田明氏(東京都立府中病院)は,結核病棟におけるHIV感染者の診療の実態を紹介しな がら,今後の診療のあり方を考察した。藤田氏の提示した例では,6例全例が入院時にすでに進行エイズ 患者であったが,すでに他院でHIV感染が診断されていた5例のうち3例は紹介元での説明が不十分だった という。また,結核菌が陰性化した後も結核以外の合併症の治療や管理のために入院が長期化した例が多 かったことも報告。この場合,他の結核患者から再度結核菌に感染する可能性もあることから,結核軽快 後は一般病棟への移動または通院治療への変更を考える必要性もあるのではないかとの考えが述べられた。 藤田氏は最後に,今後のHIV感染者の診療を考えた場合,結核病棟のある病院では総合的な診療体制が, また結核病棟のない病院では結核病棟の整備が必要との提言を行なった。
 この他,大瀬寛高氏(国療晴嵐荘病院),豊田丈夫氏(国療東埼玉病院)からもそれぞれHIV感 染者の非定型抗酸菌症,抗酸菌症例の検討が報告された。会場ではHIV感染を疑った理由や臨床所見など について活発な質疑応答があり,関心の高さをうかがわせた。