表紙画像

JJNスペシャル No.80
今日から役立つ 剤形別くすりの知識

著:大谷 道輝  東京逓信病院薬剤部副薬剤部長

書 評

書評 (雑誌 『薬局』 Vol.58 No.11より)
書評者:黒山 政一(北里大学東病院 薬剤部長)

 厚生労働省では、2001年から医療にかかわるインシデント事例を収集・分析し、その結果を日本医療機能評価機構のホームページにおいて公開しています。2007年6月の報告書(第21回ヒヤリハット事例)によると、2006年7月から9月までに50,769件の事例が収集され、その内訳を発生場面別にみると「処方・与薬」に関するものが全体の23.5%を占め、最も多い状況になっています。医薬品にかかわるにはインシデントや医療事故には、看護師、特に経験年数の少ない看護師の関与が目立ち、看護師の医薬品に関する知識、経験の不足などが重大な要因の1つとして考えられています。

 本書は、そのキャッチフレーズ「与薬事故防止はカタチから!」にもあるように与薬事故の防止を主眼とし、看護師を対象に最低限知ってほしい薬剤の知識を剤形別に整理したものです。それぞれの章は「基本編」「管理編」「実践編」の三部構成になっています。基本編には剤形ごとの利点・欠点や副作用などの基礎知識、管理編では保存・管理上の注意、実践編では与薬・服薬指導上のポイントがQ&A形式でまとめてあります。興味をもった項目、疑問に思った項目から参照することも可能です。また、各剤形別によくある「インシデント(ヒヤリハット)事例」なども掲載され、与薬事故の防止や医療安全の視点からの工夫も随所にみられます。

 経験年数の比較的少ない看護師だけではなく、指導する立場にある看護師にとっても必携の書籍であると思われます。また、看護師教育、看護学生教育に関与する病棟担当薬剤師はもちろん、新人薬剤師、薬学生教育に関与する薬剤師にとっても非常に有用な書籍であると考えます。