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【特集】

膠原病・自己免疫疾患を「見える化」する

安岡 秀剛(藤田医科大学医学部リウマチ・膠原病内科学)


 まず初めに,今回大変ありがたいことに『medicina』の特集に携わらせていただくことになり,大変感慨深い気持ちになりました.私が内科研修医だった頃,インターネットも現在ほど便利なものではなく,図書館や大学の書店に頻繁に出入りしては成書や雑誌を手当たり次第に目にして情報を探したものだなあ,と.そして書店を訪れるとこの雑誌も手に取り,初めて回る内科各科の知識を整理したり,最新の情報を得たりしていたことを思い出しました.本当に懐かしく思います.そういった意味では,現在ではインターネットから知識を得ることも容易な時代となり,大きな変化が訪れていることを強く感じざるを得ません.

 私が専門医を目指し研修医をしていた頃は,リウマチ・膠原病の病態に関して明らかになっていることが現在に比べて圧倒的に少なかったと思います(もちろん勉強不足もあったと思いますが).また患者さんの疾患活動性の評価についても指標が整備されておらず,患者さんがどのような状態にあるのかを理解するのも大変難しかったです.さらに希少疾患ということもあり,治療に関するエビデンスも乏しかったと思います.結果として,指導していただいている先生方から「アート」としてリウマチ・膠原病診療を学ぶことが多かったと感じています.

 現在,依然として病態がクリアになったとは言えないものの,疾患がより「見える」ようにはなってきました.これは現在に至るまでさまざまな研究や取り組みが行われ,着実に疾患に対する理解が進んできているからであろう,と思います.今回の特集ではそれぞれの領域を国内外でリードするフロントランナーの若い先生方にお願いし,現在の取り組みから「見えるようになったリウマチ・膠原病」について語っていただきました.そうした数々の取り組みを通じて,リウマチ・膠原病診療が「見える」ようになっていることを感じていただくことができたらと思いますし,興味やより深い理解を得ていただければと思います.

 本特集はある意味,リウマチ・膠原病学の「現在地」を示していると言えるでしょう.しかし,巻頭の座談会でも話題に上がりましたが,「現在」までの進歩の過程で逆に「見えなくなってしまったもの」があることを忘れてはならないと思います.例えば治療の進歩により,疾患の自然歴あるいは疾患の本質が見えにくくなったことは,大切な「見えなくなってしまった」事象の1つではないでしょうか.若い先生方におかれましては,興味を持たれましたらぜひ成書に立ち返って「見えなくなってしまった」疾患の本質について,勉強されることをお勧めしたいと思います.本特集を目にしていただいたことをきっかけにして,先生方のなかからリウマチ・膠原病の病態解明の「未来」を開いてくれる方々が現れることを心から期待し,巻頭の言に代えさせていただきたいと思います.