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【特集】

患者満足度の高い便秘診療

中島 淳(横浜市立大学医学部 肝胆膵消化器病学)


 超高齢社会を背景に,便秘患者が著増しているのは周知の事実である.また,内科のみならずどの診療科でも便秘は問題となるが,その診断や治療は医学部はもとより卒後教育でもほとんど学ぶ機会がなく,ただ下剤を処方するだけのきわめて質の低い治療であった.特に,刺激性下剤の適正使用の逸脱は,目を覆うばかりの現状である.

 これは長らくわが国では便秘の治療薬があまりなかったことによるが,近年新薬が続々と登場して先進国並みになり,治療薬の選択肢が増えたという点では改善したと言ってよいだろう.しかし,多種多様な新薬をどう使い分けるか,また便秘の重症度や病型をどう診断するのかなど,まだまだ課題は多い.

 これまで,便秘はQOLを低下させるだけの疾患と認識されてきたが,近年の研究により,その認知は大きな修正を余儀なくされている.循環器領域では心血管イベントの重要なトリガーとして,腎臓領域では腎機能悪化のリスク因子としてのエビデンスが続々と報告されてきている.また,強皮症のように難治性便秘を合併する膠原病や精神疾患,さらに緩和医療など,各領域において便秘の扱いは困難を極めている.

 便秘患者はあらゆる診療科で遭遇するcommon diseaseである.このような背景で,便秘診療をどうすべきかを見直すきっかけになればと思い,本企画を立案した.実地臨床での当該分野の知識のupdateに役立つことを期待したい.