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【特集】

内科医が押さえておくべき
検査の考えかたと落とし穴

野口 善令(名古屋第二赤十字病院総合内科)


 従来の検査に対する一般的な捉え方は,ともすると,検査をして異常値が出れば病気があると判定するというイメージになりがちです.しかし,現実には検査にも不完全・不確実な部分があるため,必ずしもこの通りにはいかず,落とし穴にはまることも,ままあります.つまり,この捉え方では検査結果が絶対的になり,振り回されることになりかねません.

 診断を目的とする検査では,やたら検査をオーダーするのではなく,まずは仮説を立て(鑑別診断を考え),仮説を評価してから検査をして確認するという図式(フレーム)を理解する必要があります.本特集ではこの図式を踏まえて,検査を適切に選択・解釈して現場の診療に役立てることを主眼としました.

 新しい検査の知識を得るにとどまらず,ゴールとするアウトカムが異なる現場での統合と適用を目指して,検査の各論を網羅的に概観するのではなく,重要な考えかた,解釈のしかた,落とし穴になりそうなポイントを重点的に,以下の4つの分類から各執筆者に語っていただきました.

 ①視点別 押さえておきたい検査の考え方
 ②新たに登場/解釈が変わった検査の考え方
 ③誤った使い方/誤った解釈をされやすい検査
 ④よくオーダーするのに案外知らない画像検査の基本

 なお,番外編として,身体所見をとるようにルーチン血液検査から病態を捉える視点も①に含めました.さらに,座談会では超高齢社会を迎えた今,従来の考え方の限界と新しい時代へのヒントになるものの見方について議論しました.

 近代医学は,伝統的に「正しい診断」に価値を置いてきました.病歴聴取,身体診察,検査と進めて,できるだけ科学的に正しい診断をつけ,病名が決まったらその病気に対する治療を行う.これは,「病気には特定できるはっきりとした原因があり,治療によって病気の原因を除去することができる」という考え方で病気を捉える生物医学的モデル(biomedical model)が背景になっています.しかし超高齢社会や価値感が多様化した社会では,この伝統的なモデルの枠にとどまる医療では患者の満足度は上がり難く,また,医療の現場によってゴールとするアウトカムも異なってくるため,部門・領域間のコンフリクトも起こりやすくなります.

 そのため,患者の心理・社会的状況や価値観を取り入れつつ,アウトカムを中心に据えた患者中心の医療を志向する動きが台頭してきました.しかし,診断,特にそのために行われる検査については,いまだ生物医学的モデルに基づいて行われているのが現状です.本特集の企画にあたっては,この問題を解決するための糸口を手探りしました.

 本特集が,読者の皆様のこれからの診療の参考になれば幸いです.