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【特集】

デキる内科医の神経内科コンサルト

河合 真(スタンフォード大学睡眠医学センター)


 とかく他科へのコンサルトというものは,気を遣うものです.長年勤務している病院で,コンサルト先の専門医が気心の知れた相手ならば「ほっ」としますし,気難しいと評判の医師ならば気を遣います.医師の仕事を顧みたときに,多くの「ストレス」の源はコンサルトから来ているのではないでしょうか.コンサルトの技量は医師としての実力と比例しますし,それが如実に相手にも伝わってしまう怖さがあります.

 コンサルトの難しさには,さまざまな要素があります.特にコンサルト先の科の「常識的な知識」や「求めてくる情報」などは大きな要素で,これを知っているかいないかで,コンサルトのストレスレベルがかなり変わってきます.そのため,研修期間中にさまざまな科をローテートして,コンサルトを出す側と受ける側の両方を経験することは一生の宝になります.私もあちこちの病院でコンサルトしたときに専門医が発した言葉が,今でも昨日のことのように思い出されます.

 さて,皆さんにとって神経内科へのコンサルトはどうでしょうか? おそらくコンサルトが難しい科の1つではないかと思います.その原因として,神経内科という分野はかなり細かい論理構築に基づいており,神経内科医もその細かさを相手に求めてしまう傾向があります.そのため,スピードを重視した大まかなプレゼンテーションをすると,細かく突っ込んだ質問を受けたりします.もちろん,コンサルトを出す側にはそれ相応の理由があるわけですから,「ごちゃごちゃ言わずに診に来てほしい」と思うこともあるでしょう.しかし,コンサルトを受ける側の神経内科医としても「呼ぶのであれば必要な情報は与えてほしい」と思っています.

 神経内科医にとって必要な情報の1つが,他科にない「局在診断」に関する情報です.画像診断全盛の現代ですが,神経内科医は神経診察に基づいた局在診断にこだわります.また,神経内科がカバーする疾患はコモンなものからかなり珍しい疾患まで幅広く,そのなかには発症が急性・亜急性・慢性のものがあります.こうしたことは他科の疾患と同様,その都度学ぶしかありません.

 コンサルトとは出す側と受ける側に上下関係はなく,限られた時間のなかで最善の診療を提供するためには,医師間のコミュニケーションが欠かせません.本特集ではコンサルトを受ける神経内科医からの要望を述べる形になっていますが,コンサルトを出す側に学んでもらうだけでなく,コンサルトを受ける側にも首尾一貫した態度(そして,できれば柔和なほうが良い)で自分の要望を伝え続ける義務があります.

 本特集を通じて神経内科医が何を考えているかが伝わることで,日常診療でのコンサルトが円滑になり,ひいては患者のため,診療の質が向上することを願っています.