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【特集】

救急外来で役立つ!
意識障害の診かた
“あたま”と“からだ”で考える

宮武 諭(済生会宇都宮病院救急科)


 救急隊から「意識障害の傷病者です」と収容要請の電話があったとき,「原因は何だろうか?」と不安な気持ちになることは少なくないと思います.その理由の1つは,意識障害には鑑別疾患がたくさんあって,救急の場でどのように鑑別していくのか,そのアプローチが定まっていないからではないでしょうか.そこで,意識障害の患者さんが救急搬送されてきたときに,どのように初期診療を進めたらよいか,その基本骨格を伝えることが本特集の目的です.基本骨格には,3つのキーワードがあります.

 1つ目のキーワードは,“持続性”か,“一過性”かです.患者さんが搬送されてきたときに,意識障害が持続しているのか,それとも既に回復していて一過性意識障害だったのかを鑑別します.

 2つ目のキーワードは,“あたま”か,“からだ”かです.意識障害は最終的に脳機能が障害されることによって発生しますが,それが“あたま”,すなわち脳局所の直接障害(脳血管障害,頭部外傷,てんかん発作,髄膜炎・脳炎など)が原因なのか,それとも“からだ”,すなわち全身性の病態(血圧低下,呼吸不全,低血糖,電解質異常,中毒など)が原因なのかに大きく分けて捉えることで,診断を絞り込みやすくなります.

 3つ目のキーワードは,“失神”か,“非失神の病態”かです.一過性意識障害は大きくこの2つに分類することができます.失神とは,“あたま”ではなく,“からだ”が原因で起こるものであり,“からだ”のなかでも,一過性の血圧低下によって全脳が低灌流となって発生するものを指します.そして,血圧低下(全脳の低灌流)以外が原因であるものはすべて“非失神の病態”に含まれます.

 以上を踏まえて,ER(救急外来)における意識障害の初期診療について,そのアプローチを図1のフローチャートにまとめました.本特集では前述した3つのキーワードを軸として,ER診療や意識障害の原因となる各病態を専門とする先生方に,実際の救急診療の流れに沿った形で,意識障害の原因を鑑別するためのポイントを解説してもらいました.また,各論では数多くある原因病態のうち,頻度が高い,あるいは診療にコツがいる病態・疾患をピックアップして,ERでの初期診療に役立つポイントを示してもらいました.図1のフローチャート内に各論文のページ数も記載されていますので,参考にしてください.

写真は本誌をご覧ください

図1 意識障害の初期診療フローチャート

 意識障害の患者さんが救急搬送されてきたとき,苦手意識を感じることなく,自信をもって診療にあたれるようになるために,本特集が少しでも役立ってくれれば,企画者として幸いです.