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【特集】


外来診療必読エビデンス
日米比較で考える内科Standards of Excellence

谷口 俊文(千葉大学医学部附属病院感染症内科)


 代表的な内科外来疾患の多くは,いわゆる「生活習慣病」と呼ばれるものです.糖尿病,高血圧,さらにはがん,脳卒中,心臓病などが含まれますが,これらの疾患は食習慣,運動習慣,嗜好が発症や進行に深く関わっています.生活習慣病は健康長寿の阻害要因として考えられており,なおかつ国民医療費にも大きな影響を与えていることは明白です.生活習慣病の代表となる疾患にはそれぞれ,日本国内および欧米諸国における莫大な臨床研究の成果があり,予防や治療などに関するエビデンスが蓄積されつつあります.しかしながら,これらのエビデンスは日々更新されており,臨床現場の医師が最新の知識を保つのは容易ではなく,また海外におけるエビデンスの解釈をどのように日本の臨床現場に当てはめればよいのかわからないのが実情だと思います.

 外来診療では,生活習慣病のマネジメントはソフトエンドポイントになりやすく,心筋梗塞,脳卒中や死亡などのハードエンドポイントは自ら関わらないこともあり,それまでのマネジメントとの相関関係がわかりづらいという特徴があります.また“cost-effectiveness”という言葉がありますが,検査や治療介入による費用対効果がどれほどあり,日々の臨床現場で実践すべきか判断するための研究なども,昨今の医療費の増大を考えると意識せざるを得ません.

 また今までの外来診療のなかで,「予防医療」を意識することはあまりなかったかもしれません.米国では外来診療の一貫として予防接種などを含む予防医療が実践されているのに対して,日本では健康診断や人間ドックなど検査を主体としています.本特集でも,予防医療は特に注目していただきたいところであり,座談会でも熱く議論されています.

 私自身の所属は「感染症内科」ですが,同時に“General Internal Medicine”という強いバックグラウンドを持っており,日々の診療のなかでもエビデンスに基づいた内科診療を意識しています.生活習慣病や予防医療の重要性は身にしみてわかっているつもりですし,他科の先生方も同じように考えられているのではないでしょうか.

 本特集では,意識的な目標設定をするためのエビデンスを日米の第一線で活躍されている先生方にまとめていただきました.外来診療に携わる読者の方々の一助になればと思っております.