目次詳細・ご注文はこちら  電子ジャーナルはこちら

【特集】

トリコになる不整脈
診断と治療のすべて!

副島 京子(杏林大学医学部付属病院循環器内科)


 「不整脈は難しい」と感じている医師・医学生は少なくないと思います.「心電図がわからない」「当直のときに不整脈の患者が来たらどう対応しよう?」「どんな薬を使ったらいいのか?」など不安に思う気持ちはもっともだと思います.不整脈は心臓の中の興奮伝搬により生じますが,興奮伝搬という目に見えないものを理解するは難しいことです.

 ところが近年,3次元マッピングシステムの進歩により,心臓の中の興奮伝搬や異常心筋をカラー表示することが可能になり,格段に理解が容易になりました.術前に撮影した3D CTの画像を読み込むことにより,解剖学的に正確な位置を見ながら,短時間の透視時間で診断し治療することができます.また,カテーテルアブレーションの進歩は,患者さんのメリットに加えて,医師にとっての「不整脈学の魅力」を非常に大きなものにしてくれました.診療においては,まず術前の発作時の心電図を見て,その不整脈の機序を予想します.診断の参考になる基準がたくさん知られています.そして,予想した不整脈の機序が正しいかどうかを術中に判断して確定診断を行い,根治に結びつけることが可能になりました.

 私が不整脈専門医を志すきっかけになったのは,研修医のときに出会った1人の患者さんでした.その方はWPW症候群で頻繁な発作があり,まず心電図でΔ波の波形から副伝導路の位置を推定し,カテーテルで部位を確定しました.そして,アブレーション治療でΔ波が消失して,正常QRSになったときの患者さんの苦しみから解放された顔を見て「これしかない!」と不整脈の道に進むと決めました.それまでの苦手意識が吹っ飛んでしまう経験で,ホップ,ステップ,ジャンプのような3段階が,何よりも楽しくなりました.

 心電図には理屈があります.暗記ではなく,理解する努力を継続すると,ある日突然わかるようになります.本特集では,不整脈学を専門としない方にもその楽しさが十分伝わるように留意しました.「不整脈の世界」をお楽しみください! そして読者の中から不整脈に興味をもって,その門戸を叩いてくれる方が現れることを期待しています.