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【特集】

誰も教えてくれなかった
慢性便秘の診かた

中島 淳(横浜市立大学大学院医学研究科 肝胆膵消化器病学教室)


 超高齢社会を迎え,慢性便秘患者は増加の一途である.60歳未満では女性に多いが,60歳を超えると特に男性の数が増え,男女ともに患者数が急増する.したがって,慢性便秘は患者の大半が60歳以上であることから,内科のみならず,あらゆる診療科で診る機会のある,まさに診療科横断的疾患である.ただし,本疾患の診療において最大の責務は内科医にあることは明記しなければならない.

 また,慢性便秘はひとたびその病に陥れば,コントロールすることはできても,完全には治癒しないやっかいな疾患であり,医師は患者と長期にわたって付き合っていくことになる.しかし,わが国ではOTC(over the counter)医薬品の便秘薬を容易に購入できることから,診療に対する満足度が低ければ,患者はすぐに薬局へ走ってしまう.いかにスマートに診断・治療するかが求められているのである.

 そうした現状がある一方で,わが国の医学教育や内科研修カリキュラムにおいて,便秘が扱われることは少ない.研修医の診療を見ても,先輩医師の見よう見まねで診療していることが多いように思われる.

 最近,32年ぶりに慢性便秘の新薬が登場し,医療現場も変化しつつある.さらに,今後も新薬が登場する予定である.高齢者だけでなく小児でも便秘患者が増加し,またこれまでにない病態の便秘も出現してきている今,医師,特に内科医は慢性便秘に対する診療能力を高める責務があると思わざるをえない.

 今回,この目的のために,最新の知見を踏まえて慢性便秘を基本から平易に解説する特集を企画し,第一線の専門家の先生方に執筆をお願いした.この場を借りて御礼を申し上げたい.今さら聞けない便秘の基礎から診療のノウハウ,さらには専門的治療まで,この1冊ですべてを網羅している.

 慢性便秘は内科医共通の疾患であり,誰もが診なければならない疾患であり,ぜひこの機会に便秘の診療を基礎から学び直して,日々の診療に役立てていただければ幸甚である.