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【特集】

抗菌薬の考え方,使い方
ホントのところを聞いてみました

笠原 敬(奈良県立医科大学感染症センター)


 自分で編集をしたのだから,当たり前といえば当たり前なのかもしれないが,すごい特集になった.これぞ求めていた内容だ.「肺炎球菌性肺炎にペニシリンGってホントに使うんですか?」今まで何度言われてきた質問だろうか.一度たりとも相手が満足する返事ができた記憶はない.

 執筆者はずばり回答する.「肺炎球菌性肺炎にペニシリンGを使わないなんて愚の骨頂です」.そうか,そう言えば良かったのか.そうしたらみんな納得したのだろう.

 本特集はこうした「ホントですか?」の特集である.まずはパラパラとページをめくってほしい.マクロライド耐性肺炎マイコプラズマの治療,気管支炎に対する抗菌薬の要否,細菌性髄膜炎に対するカルバペネム,骨髄炎の適切な治療期間やESBL(extended spectrum β-lactamase)産生菌感染症に対するセフメタゾールなど,「ホントですか?」と聞く立場の人も,聞かれる立場の人も,一度や二度では済まないくらい耳にしてきた質問がずらりと並んでいるのがおわかりになるだろう.今度から「ホントですか?」と質問されたら,該当する項目をコピーして渡すだけで済むと思うと,本当に嬉しい(笑).という冗談はさておいて,答えにくい質問に対して各執筆者が本当に骨を折って回答していただいた.この場を借りて御礼を申し上げたい.

 座談会では15年前,私が感染症の道に入るきっかけとなった先生方に無理を言ってお集まりいただいた.座談会を企画するのなんて一生に一回のことだ,後悔のないよう,本当に集まっていただきたい方々にお願いしよう,と思って清水の舞台から飛び降りる気持でお声を掛けさせていただいたところ,快くお集まりいただいた.「10年前より現在はずっと良くなった.10年後はさらにずっと良くなるだろう」,皆さんがそんな風に前向きにお考えになっていることに喜びを感じた.

 残念ながら(嬉しいことに?),「ホントですか?」に終わりはない.本特集が読者の今の「ホントですか?」を一つでも解決し,新しい「ホントですか?」を生み出す一助になれば幸いである.