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【特集】

いまアレルギー外来がおもしろい
安全で効果の高い治療を使いこなす

岡田 正人(聖路加国際病院 Immuno-Rheumatology Center)


 大学病院での研修中に「外来ほど楽しいものはない」と教授によく言われました.彼のアレルギー臨床免疫外来には診断のつかない患者がたくさん紹介されてきて,それを病歴と診察を中心に理路整然と診断していくのは見ていてもとても楽しかったですし,自分の患者一人ひとりをプレゼンして指導を受けると自分も成長するのがよくわかり,基礎研究が忙しい時期でも外来だけは楽しみにしていました.その教授がイェール大学でアレルギー科を立ち上げたのは60年以上前で,石坂公成先生がIgEを発見する前でした.彼によると,最初に抗ヒスタミン薬が発売された時,もうこれでアレルギーは解決したと専門を変える医師が沢山いたそうです.さて,いまはどうでしょうか.診断はいまだに病歴と診察の醍醐味を残しながらも,治療の進歩は著しく,眠くならない抗ヒスタミン薬,副作用の少ない1日1回点鼻ステロイド,1つの吸入薬で維持も発作時も対応できるSMART(symbicort maintenance and reliever therapy)療法に加えて,発作自体の出現率を下げる1日1回の長時間作用性β2刺激薬(LABA)まであります.目薬も抗ヒスタミン作用と肥満細胞顆粒遊離抑制作用の両方をもつもの,鼻閉にも血管収縮薬/抗ヒスタミン薬の合剤から安全な抗ロイコトリエン薬まであり,さらに,とうとう日本にも安全で根治治療である舌下減感作療法が本格的に導入されました.

 “いま,アレルギーがおもしろい”.そうです,とても安全になった効果的な治療のコツを覚えれば,一般内科に長けた先生方には患者さんが“良くなった”と実感する世界最高レベルの診療をしていただけると思います.特別な手技は全く必要なく,すぐに使える分野です.

 本特集では,進歩したアレルギー診療の中心である薬剤を,まずはカテゴリーごとにまとめてご紹介し,それぞれの良い所を比較して使い分けに役立つように項目を設けました.そして,最後に各論として一般診療で毎日のように遭遇するcommon diseaseの診断と治療,生活指導と薬物療法についてまとめました.治療薬の部分と疾患ごとの治療の記述に関しては重複もありますが,2人の専門医の異なるスタイルを学ぶことで,読者の先生方がご自身の診療にあった治療方針を立てやすくなるのではと考えています.

 95%以上のアレルギー患者さんの診療をしている総合診療の先生方に,アレルギー疾患の最も安全で最も効果の高い治療を提供していただくことに少しでもお役に立てれば幸いです.