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【特集】

自信がもてる頭痛診療

平田 幸一(獨協医科大学神経内科)


 第一線の診療において頭痛は最も多い疾患の1つで,きわめて重要な症状・疾患であることはどなたもご存じでしょう.風邪に伴う頭痛で来院する患者さんもいますが,死に直結する頭痛もあります.そして,重要なのはこの少子高齢化社会での働き手,あるいは未来の働き手が片頭痛をはじめとする一次性頭痛,しかも慢性・難治化した頭痛に困って,困り果てて来院するのがまさに頭痛なのです.

 そもそも頭痛を感じたことのない人は2人に1人しかいないと言われています.このなかで一次性頭痛において最も手強いとされる片頭痛の有病率は人口の8.4%,緊張型頭痛は22%強との報告があります.しかも片頭痛が多いのは20代~40代の働き盛りで,その世代の女性の5人に1人は片頭痛なのです.少子高齢化が最大の問題とも言われるわが国の若年女性を苛む片頭痛にどう対処していくかは,今後のわが国の存亡にも関与すると言っても過言ではありません.

 さて,残りの10%強の頭痛は二次性頭痛です.冒頭にも述べたとおり風邪に伴う二次性頭痛で来院する患者さんもいますが,実はそれが髄膜炎であったということはしばしばあります.また,歩いてきたからそんなことはあり得ないと思っていた結果がくも膜下出血だったという恐ろしいこともあり得ます.そうです,皆様も危険な二次性頭痛を見逃せば,一貫の終わりであることはうすうす感じているものの,どうしたらその知識が系統的に得られるのかという疑問をもたれていると思います.また,外来患者さんにとても多い片頭痛に代表される一次性頭痛の対処をどうしたらいいか,さらには,妊娠,出産,育児をしていく片頭痛女性に対して,実際どのように対処したらよいのか,多くの先生方が困っていることと思います.

 もちろん,一昔前に比べれば慢性頭痛治療に対する認識,そして診断・治療のレベルは着実に向上していますが,一方で,片頭痛をはじめとする一次性頭痛は,世界最大数のMRI保有国であるわが国の画像診断技術が本質的な部分では役に立たず,その診断・治療にはEBMを越えた知識,すなわちコツや経験が必要なのです.

 読者が頭痛患者に遭遇した時,この特集を参照し,「あーあ,これだ.これだ」「こんな治療をしてみよう」と思ってくだされば,そして自信をもって頭痛診療に当たってくだされば,何よりの幸せです.