目次詳細・ご注文はこちら  電子ジャーナルはこちら

特集

最新情報をおさえる!
臨床栄養の活用ガイド

丹藤 雄介(弘前大学大学院保健学研究科 医療生命科学領域生体機能科学分野)


 疾病に罹患する前でも後でも,栄養状態を良好に維持することの重要性は同様である.例えば増加する生活習慣病においては,予防においても治療においても食事をはじめとする生活習慣の是正は必須であり,高齢者において栄養状態を良好に維持することは,さまざまな疾患の罹患リスクを下げるだけではなく,疾患からの回復を早める.さらに,栄養状態を維持することでさまざまな状況の患者(特に末期がん患者)のQOLが維持される.逆に,臨床で栄養に配慮がなされなければ,疾患のリスクは上昇し,疾患からの回復は遅れ,QOLは低下する.このようにきわめて単純なことであるのだが,栄養療法は薬物療法に比べると,その重要性がわかりにくく,軽視され,誤解されがちである.またさまざまな情報が氾濫しており,適応とならない病態であるのに患者さんが誤用しているケースも経験する.

 このような状況のなかで,われわれ臨床医は多くの情報から患者さんの病態や環境に合ったものを正しく選択し,提供していかなければならない.栄養について健康講座などで話す機会もあるだろうし,診察室で患者さんから質問を受けることもあるかもしれない.さらに,入院治療では疾患の病態を考慮して必要な治療を選択していく病態栄養の考え方が重要である.最近では,チーム医療のなかで病態の理解を共有して治療に当たるNST(栄養サポートチーム)の重要性も広く受け入れられている.

 今回,栄養関連のトピックスやキーワードについて,「I.栄養に関する新しい用語や新しい考え方」「II.さまざまな病態における栄養」「III.医療連携や療養,在宅医療での栄養」の3つのカテゴリーに分けて,紙幅の都合上きわめて一部であるがエキスパートの先生方にわかりやすく解説いただいた.座学ではなく,それぞれの執筆者が今,目の前の患者の栄養を維持改善しようとしている臨場感,さらに,古いものにとらわれず新しい技術や概念を応用し,効果を実証し,患者のために臨床栄養学を発展させようとしているのが伝わると思う.

 本特集を通読していただくことで,外来,病棟だけではなく,保健医療や社会福祉などさまざまな場面で,栄養に対する有効なアプローチを探ることが可能となるであろう.また,本特集を読者の先生と一緒にチーム医療で栄養療法にかかわる多職種の皆さんにも紹介いただき,ともに知識を深めていただければ幸いである.