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特集

関節リウマチ・膠原病
症例で学ぶ診断と治療

金城 光代(沖縄県立中部病院総合内科)


 研修医時代を振り返ってみると,自分自身で膠原病の疾患イメージがなかなか作れずに困った思い出がある.膠原病の面白さと難しさは,どんなところにあるのだろう.高血圧や糖尿病などに比べると疾患頻度が少なく,多彩な症状の組み合わせを呈することが,初期研修医にとっては難しいという印象をもたせるのだろう.逆に後期研修医レベルになると,症状の多様さと診断・治療のチャレンジを楽しいと感じる方も多いかもしれない.症状に合わせた身体所見の取り方,検査項目の解釈,免疫学に裏打ちされたさまざまな新しい治療など,習得すべき項目も多い.

 繰り返しコモンな疾患を経験すると,再び同じ疾患に出会っても診断に迷うことは少ない.例えば,咳・痰・発熱があれば肺炎,といったように症状からすぐ疾患を思い浮かべることができる.疾患頻度が少ない場合は,関節炎のパターンや特徴的な皮膚所見を知っていることが,鑑別疾患を想定する助けとなる.そしてもう1つは,学生時代に勉強したような各疾患の理解である.膠原病では,この2つの軸を組み合わせて勉強していくことになる.

 これらの理解を自分のものにしていくのには,なんといっても症例が一番勉強になる.頻度の低い膠原病疾患は,自分で体験した症例のみならず,ほかの人の症例も経験値を上げてくれる.いろいろな先生方から教わったのは,ほかの症例にも応用可能な一般的ルールを意識しながら1つひとつの症例を診ていくとよい,ということである.1つひとつの症例には,いつも新たな学びがある.

 今回の特集は,大きく5つの章で構成されている.第I章では,膠原病疾患を疑う際のアプローチを,症状・所見と検査からまとめていただいた.幅広い内科診療において,関節リウマチ・膠原病疾患を疑う時のアプローチの助けになる.第II章では,この10年で大きく変わった関節リウマチ診療のスタンダードを扱った.診断をつけたら,疾患活動性を評価し,糖尿病治療のHbA1cと同じように関節リウマチの治療目標を決めながら介入していかなければならない.第III章では関節症状の重要な鑑別疾患について,そして第IV章は各膠原病疾患についての解説である.最後の第V章では,知っていると役に立つ,膠原病関連症状への対症療法について述べている.

 「症例で学ぶ診断と治療」という枠組みで執筆いただいたが,これらは臨床医である各執筆者の先生方が経験された症例集でもある.いろいろな考え方のヒントや経験を含んで,わかりやすく書いていただいており,私自身も,多くのことを改めて学ぶことができた.研修医や一般内科の先生方,そして各分野の専門医の先生方,さらに関節リウマチ・膠原病診療に携わっている先生方,すべての方に今回の特集を読んでいただけたら幸いである.