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特集

炎症性腸疾患攻略の手引き
これだけは知っておきたい!

仲瀬裕志(京都大学医学部附属病院内視鏡部)


 日本において炎症性腸疾患,潰瘍性大腸炎,Crohn病患者は明らかに増加しています.もう,希少疾患の範疇を逸脱しているといっても過言ではありません.そのため,炎症性腸疾患は大学病院のみで診断・治療する疾患ではなくなってきています.でも,本当に正しく炎症性腸疾患の診断がなされているのでしょうか? 感染性腸炎が潰瘍性大腸炎やCrohn病と診断されてはいないでしょうか?

 原因不明と言われてきた炎症性腸疾患の病態は徐々に解明されつつあります.遺伝子,腸内細菌,環境因子,これらが関与することは間違いがありません.しかしながら,いまだに根本的な結論は出ていません.また,発症に関与する特定の遺伝子をもっているからといって,必ずしも炎症性腸疾患を発症するわけではありません.近い将来,炎症性腸疾患の予防は可能なのでしょうか?

 近年では,炎症性腸疾患に対する治療法が著しく進歩してきています.患者さんにとっては,治療薬剤の選択肢が増えることは福音です.でも一方で,臨床医は何をどう使用していくのか悩ましいというジレンマにぶち当たっているのも事実です.臨床現場で,炎症性腸疾患患者さんを診たときには,もちろん治療ガイドライン通りに治療を進めていく必要があるでしょう.しかしながら,本当にそれだけでよいのでしょうか.患者さん一人ひとりの顔が違うように,治療も患者さんに応じて変わってくるのではないでしょうか.例えばいま,炎症性腸疾患患者さんに対して,日本では生物学的製剤がかなり使われていますが,生物学的製剤に抵抗性の患者さんはどのように治療をしていくべきなのでしょうか?

 今後,私たちは増え続ける炎症性腸疾患患者に対応していかねばなりません.多くの患者さんは若くして発症し,一生治療を継続していきます.だからこそ,患者さんのQOLを常に考えて治療していく必要があります.そのためには,現在までに明らかとなってきた炎症性腸疾患の病因・病態をまず知ることが重要です.病因のメカニズムを頭に入れておくことは,炎症性腸疾患の正確な診断・治療に必須だからです! したがって,本特集は炎症性腸疾患の基礎ならびに臨床の両方に焦点をあてています.なお執筆者は,現在この分野の第一線で活躍されておられる先生方ばかりです.「この1冊さえあれば大丈夫!」という思いで,炎症性腸疾患の診断および治療のバイブルとなるような特集を組んでみました.

 本特集が,研修医,一般内科医,専門医に広く読まれ,炎症性腸疾患患者さんのための正しい診断ならびに適切な治療が行われることを願っています.