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特集

不整脈の診断と治療
―ポイントをおさえよう

山下 武志(心臓血管研究所)


 不整脈は,循環器内科の外来診療で多くの割合を占める疾患です.かつて,その診断や治療に心臓電気生理学的な知識が必須と考えられていた時代がありました.そして,そのことによって不整脈診療が敬遠されがちになったことは否めませんが,数々の大規模臨床試験により不整脈診療の方向性はずいぶん見やすくなったと思います.それは「心電図から診断し」,「電気生理学的な解釈をして」,「心電図を正常化する」というかつての王道とされた方法から,「心電図から診断し」,心電図から離れて疫学的な情報を基本に「患者の生命予後とQOLを向上する」という新しい診療タイプへの変換です.社会の高齢化が進む今,不整脈の罹患人口が増加し,すべての内科医が不整脈診療に多かれ少なかれかかわらざるを得ません.そして,この診療タイプの変換は,そのような意味においても時代の要請に答えたものと言えるでしょう.

 そのうえで,不整脈診療を最短で会得するためのポイントがいくつか挙げられると思います.

ポイント1:その不整脈に病的意義があるかどうかを判断する

 そのためには不整脈の疫学に対する知識が必要になります.健常者でどのような不整脈がどのような頻度でみられるのかという知識は病的意義を推測する大前提となるからです.

ポイント2:病的意義があるかどうかを判断するための検査手順を知る

 病的意義があると推定した時,さらにその病的意義を決定するための検査手順とその意義や限界を知っておくことが必要になります.

ポイント3:治療する場合に目的意識をもつ

 病的意義が決定されても,治療を行う場合の目的は,「不整脈を消す」ことと必ずしも一致しません.生命予後,合併症の予防,症状など,各患者により異なり,その目的によって選択できるオプションは異なることになります.

ポイント4:薬物治療と非薬物治療の強みと弱みを知る

 選択する治療オプションは,大別して薬物治療と非薬物治療がありますが,最終的には患者の選択を考慮する必要があります.その際,その強みと弱みを患者にうまく説明できる必要があるでしょう.

 本特集は,以上の4つのポイントを読者が要領よく理解できるようにまとめられたものです.