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今月の主題

内科医のための気管支喘息とCOPD診療

巽 浩一郎(千葉大学呼吸器内科)


 気管支喘息とCOPD(慢性閉塞性肺疾患chronic obstructive pulmonary disease)はともに呼吸器診療においてはcommon diseaseであり,両疾患とも閉塞性肺疾患に分類されている.ともに「息苦しくなる」病態であるが,COPDの診断基準を認識せずに気管支喘息として治療している場合も多くみられる.気管支拡張薬を使用する点では共通しているが,その使い方は同じでよいのかという問題点がある.COPDに吸入ステロイド薬を使用するのは妥当かという問題点もある.COPDはイコール肺気腫かという問題点もある.病態を認識すると,より適切な治療が可能かもしれない.気管支喘息とCOPDは概念上別の病気で,鑑別も治療もそれほど難しくはないと思われるかもしれないが,「さにあらず」が本特集の主旨である.

 高齢者では気管支喘息とCOPDの合併(overlap)があるかもしれない.慢性喘息では動くと息苦しさを感じているかもしれない.喫煙歴のある気管支喘息患者もいる.アレルギー歴のない気管支喘息患者もいる.COPDは経年的に呼吸機能の悪化がみられるとされているが,数年の経過ではほとんど変化のない場合もある.胸部画像で気腫病変のないCOPD患者もいる.両疾患とも気流閉塞に対して気管支拡張薬が適応になるが,気管支喘息にはb2刺激薬,COPDには抗コリン薬でよいのか.気管支喘息とCOPDの病態が合併しているときの治療はどうするべきか.臨床の現場では,さまざまな患者から学ぶべきことはたくさんある.

 「息が吐きづらい」のが閉塞性肺疾患であるので,その点では気管支喘息とCOPDに共通点がある.しかし,診断と治療という観点で考えると,喘息を1つの病気,COPDを1つの病気と捉えると混乱が生じる.どちらも,その病態は重症度ないしは病期,成立および「増悪」の誘因(原因)などが個々の患者により異なる.さらに,喘息とCOPDの病態を併せ持った患者にも遭遇する.両疾患ともに臨床的安定期と増悪時では,その病態が異なり,治療戦略も異なる.さらにプライマリケアでは,増悪予防,すなわちいかに臨床的安定を得るかということも重要になる.