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今月の主題

外してならない循環器薬の使い方 2012

山科 章(東京医科大学第二内科)


 循環器領域に限ったことではないが,治療の目的は生活の質(QOL)と生命予後の改善であり,その基本は生活習慣改善と薬物療法である.カテーテル治療や外科手術などの侵襲的治療は,最適な内科治療(optimal medical therapy)と比較して,その予後やQOLを改善すると判断されるときに選択される.そのため,臨床医はそれぞれの疾患における治療ゴールや最適な内科治療について,十分に理解しておく必要がある.そういった観点から一般内科診療としてよく診る循環器疾患に焦点をあてて,「外してならない循環器薬の使い方2012」を特集した.

 循環器領域はガイドラインがそろっており,日本循環器学会のホームページを開くと,現在49のガイドラインが紹介されている.日常診療で遭遇するほとんどの循環器領域をカバーしており,エビデンスに基づく標準的診療が紹介されている.しかし,ガイドラインは大規模臨床試験をもとに最新の知見をまとめた標準的診療を紹介するものであるが,個々の患者にすべて適応できるわけではない.実際の医療現場では患者の背景や病態を見極めたうえで個別の判断をしなければならない.エビデンスを参考にしながら,個々の患者への妥当性を考え,さらに,患者の価値観に合わせて最適な医療を判断するのがEBMである.そこには,外してならない臨床のコツがある.

 循環器の診療では,急性冠症候群や心原性ショックなどの救急医療から,不整脈,心不全,心筋症,弁膜症などの専門性の高い疾患,さらには,動脈硬化,高血圧や脂質異常症などの生活習慣病までを幅広くカバーしなければならない.治療薬も,救命救急薬,急性の病態を改善する薬剤から,長期予後を改善する薬剤と幅広い.それぞれの疾患・病態における治療目的を見据え,個々の患者に適した薬剤の選択が必要である.そこで本特集では,一般開業医や総合内科医の先生が,安定した患者として専門医から逆紹介を受けても戸惑うことなく循環器薬を処方できるようになること,非循環器専門医が循環器疾患患者のコンサルテーションを受けた時,スムーズな併診ができること,あるいは循環器科をローテートしている研修医が循環器診療について理解できることを目的として企画した.診療において外してならない循環器薬の薬物治療法が網羅された充実した内容になっている.日々の診療において活用していただければ幸いである.