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今月の主題

神経疾患common diseaseの診かた
内科医のためのminimum requirement

成田有吾(三重大学)


 高齢化とともに脳血管障害や神経変性疾患をはじめ各種神経疾患の有病率も高まっている.近年,マスコミやインターネット上の情報は,玉石混淆ながらもさまざまな脳科学,神経系知識,神経疾患にかかわる情報を提供している.

 診療科の領域を越えての神経系診療が避けられない状況ながら,最近は病院入院日数が漸減し,かつ地域医療における医師の偏在が顕著になっている.このため,専門医による病院での神経内科診療から,地域医療機関の内科医,在宅担当医への連携および移行が求められることも増えてきた.一般診療においても神経系疾患の知識と診察法をある程度理解して臨むことが要求されるようになってきた.

 今月の主題は,神経内科領域でよく遭遇する訴えや疾患(common diseases)に対応するための基本的な知識を中心に企画した.家庭医,他領域を専門とする内科医,他科医師,研修医の先生方にも理解しやすいよう,病歴でぜひ押さえておきたい項目から,診断,治療,専門医への受診を勧めるべきポイントなどについて現場に詳しい専門医が執筆した.緊急対応や専門医との連携など,非専門医が日常診療で困らないための情報提供を本特集の第一の目的としている.また,神経疾患では認知機能障害や移動・コミュニケーション障害が生じやすく,在宅療養を余儀なくされる人も多い.このため,在宅療養者を支える社会資源の知識と多専門職種連携についても一項が設けられている.治療・症状改善に向けての取り組み(新薬,治療法など)も織り込み,全人的医療としての神経内科の魅力を各執筆者が書き込んでいる.

 研修医や他診療科の先生方が,神経系疾患に興味をもって専門医とのコミュニケーションを深め,連携して神経系疾患を診るきっかけになれば望外の喜びである.