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今月の主題

緊急画像トラブルシューティング
内科医のためのPearlとPitfall

岩田充永(名古屋掖済会病院救命救急センター)


 わが国の多くの医療機関では,画像診断の非専門医(内科医や救急医)も容易に画像検査にアクセスできる環境であると思います.この環境は多大な恩恵をもたらしていることは疑う余地がありませんが,救急診療の現場で初診時に正しい診断が下せなかった事例が発生すると,患者側からは「あの時に検査しておけば診断できたのではないか?」と,また,病院管理職からは「なぜ検査しておかなかったんだ.とりあえず検査はたくさんやっておけ.困ったらCT撮っておけばいいんだよ」という類の発言に遭遇することはないでしょうか?

 確かに画像検査はわれわれに多くの情報をもたらし診療の大きな武器となりますが,とりあえず画像検査をしておけば,すべての見落としが防げるという誤解が,医療を利用する側だけでなく医療を提供する側にも存在するのは残念なことです.

 このような環境で,われわれ画像診断の非専門医は,画像について以下の2つのピットフォールに陥りやすいのではないかと感じます.

(1)画像に異常が写っているのにそれを指摘できないピットフォール
(2)画像で異常所見を認めない=疾患が否定できると考えてしまうピットフォール

 これらのピットフォールを回避するためには,画像読影能力の向上のために研鑽を継続することはもちろんですが,「とりあえず画像検査,異常がなければそれでよし」という安易な思考と決別し,「自分はどんな疾患を疑って,どんな所見を調べるために画像検査をするのか,それがない場合は,どのような可能性が考えられるのか」という臨床医としての診断学の基本に回帰し,画像を読影するだけではなく,診療所見と画像所見を総合的に解釈することが必要です.

 将来的には,「画像がオンラインで専門医のもとに送られ即座に読影レポートが返ってくる.自分は画像とレポートを参照しながら読影して診療所見と併せた総合判断を下し,画像診断能力を磨く」という環境が整備されることが理想的なのですが,検査へのアクセスばかりが爆発的に向上する一方で,われわれの学習環境の整備にはまだまだ時間がかかりそうです.それを嘆いてばかりもいられません.

 本特集では,救急診療の現場で遭遇することが多い画像に関わる問題を提起し,それに対しての解決の手がかりを一流の臨床家に解説してもらいました.本特集が日々の救急診療で奮闘されている皆様の診療の一助となることを心から願っています.