今月の主題

腎・尿路疾患 -一般診療から専門診療へ

富野康日己(順天堂大学医学部腎臓内科)


 本号では,「腎・尿路疾患-一般診療から専門診療へ」と題し,第一線でご活躍の腎臓専門医にわかりやすく解説していただいた。

 現在わが国で末期腎不全から維持透析療法を受けている患者は,25万人を超えているが,透析療法の導入を抑制・阻止することは,われわれ腎臓専門医にとって最も重要な課題である。また,透析療法導入後は社会復帰を含めた“より良い透析ライフ”を長期間継続できるようにすることも重要である。

 腎・尿路疾患の多くは自覚症状や検査値に異常が現れにくいため,腎臓は“沈黙の臓器”と呼ばれ,疾患の発見が遅れる傾向にある。したがって,腎・尿路疾患の早期診断と的確な治療の選択が望まれている。私自身,「血尿と蛋白尿が持続して認められたが,血液検査や腎機能検査が正常なので,そのまま放置してよいと近医に言われ治療せずにいたところ,約1年後に透析療法が導入された患者」を忘れることができない。腎・尿路疾患の臨床について,腎臓専門医以外の医師にも十分に理解していただきたいと願っている。

 患者の多くは,学校や職場の検尿,保険に入る際の尿検査などで偶然蛋白尿や血尿を指摘され,腎臓病が発見される。そうした尿所見の異常やむくみ,高血圧,乏尿といった症候,さらには腎機能の低下がみられた場合には,まず腎臓を専門としない学校医や産業医を含む一般臨床医を受診したり,研修医が診療を担当することが多い。

 腎臓専門医以外の医師には,そのような患者を診た場合,どういった検査を行うべきか,検査成績をどのように解釈し治療(一般療法・薬物療法)はどうすべきなのかをよく理解していただきたいと願っている。さらに,一般臨床医は腎・尿路疾患や腎不全治療のどこまで関与し,どのような状態になったら腎臓専門医・透析専門医に紹介すべきかを理解していただきたい。

 以上のことから,本号は主な腎・尿路疾患における一般臨床医と腎臓専門医の病診連携に生かすことができる内容になっていると思われる。また,腎臓専門医にとっても腎・尿路疾患の診断と治療の知識を再整理するうえで有用である。

神田川のほとりにて