●Case Study 診断に至る過程 | ||||
第9回テーマ 優先すべきこと 松村正巳(金沢大学医学部付属病院リウマチ・膠原病内科)
本シリーズではCase Studyを通じて鑑別診断を挙げ,診断に至る過程を解説してみたいと思います。どこに着目して鑑別診断を挙げるか,次に必要な情報は何か,一緒に考えてみませんか.今回は以前にTierney先生に,ディスカッサント(discussant)として解説していただいた患者さんです。
いかかがでしょうか。まず病歴,身体所見から問題点を重要なものから,すべて挙げてみましょう。後ほどTierney先生の鑑別診断を示します。
発熱から鑑別診断を挙げるのは鑑別が多岐にわたり困難です。今回もリンパ節腫脹をきたす疾患を切り口にして鑑別診断を考えてみましょう。Tierney先生は,石のように硬いリンパ節は,癌の転移を示唆し,リンパ腫,結核性リンパ節炎によるリンパ節腫脹は,ゴムくらいの硬さに感じると説明しました。
Tierney先生は,われわれに鑑別診断を説明するときに,いつも以下のカテゴリーを使います。Vascular(血管性疾患),Infection(感染症),Neoplastic(腫瘍性疾患),Collagen(自己免疫疾患),Toxic/Metabolic(中毒/代謝性疾患),Trauma/Degenerative(外傷/変性疾患),Congenital(先天性疾患),Iatrogenic(医原性疾患),Idiopathic(特発性疾患)。 20歳代の女性であること,病歴,身体所見を考慮して,鑑別診断は以下のように挙げました。
ここでTierney先生は,最も除外したいリンパ腫を鑑別診断の最上位に挙げました。鑑別診断を挙げるときには,得られた情報をもとに可能性の高いものから順に挙げるのが一般的です。もう1つの考え方として,患者さんの予後にとって最も重要な疾患から挙げ,解決してゆく方法があります。診断が遅れた場合に,患者さんに多大な不利益が生じる可能性のある疾患は,早期に否定しておきたいからです。例えば,胸痛における4つのkiller chest pain(心筋梗塞,解離性大動脈瘤,肺塞栓,緊張性気胸)があります。さらに除外したいものに結核性リンパ節炎を挙げましたが,通常,結核性リンパ節炎ではリンパ節に圧痛を認めません。SLEも挙げましたが,発熱以外に所見が乏しく,診断には血液検査が必要です。Tierney先生は,次のように鑑別診断の順位をつけました。。。 (つづきは本誌をご覧ください) 参考書1)Henry PH, Longo DL:Enlargement of lymph nodes and spleen, Kasper DL, et al (eds):Harrison's Principles of Internal Medicine. 16th ed, pp343-348. McGraw-Hill, 2005 2)菊池昌弘:特異な組織像を呈するリンパ節炎について。日血会誌 35:379-380,1972 3)藤本吉秀,他:頸部の亜急性壊死性リンパ節炎;新しい病態の提唱。内科 20:920-927,1972 4)Norris AH, et al:Kikuchi-Fujimoto Disease;A benign cause of fever and lymphadenopathy. Am J Med 101:401-405, 1996 5)浅野重之,他:壊死性リンパ節炎。別冊日本臨牀,血液症候群III:326-329,1998 6)Yoo JH, et al:Kikuchi-Fujimoto Disease;A benign cause of fever and lymphadenopathy. Am J Med 103:332-333, 1997 7)Smith KGC, et al:Recurrent Kikuchi's disease. Lancet 340:124, 1992 8)Blewitt RW, et al:Recurrence of Kikuchi's lymphadenitis after 12 years. J Clin Pathol 53:157-158, 2000
松村正巳
Lawrence M. Tierney Jr.
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