特集の理解を深めるための24題
問題1
便秘と循環器疾患に関して,正しいものをすべて選べ.
- A
- 慢性便秘は心血管イベントのリスクにならない.
- B
- 便秘や排便時のいきみは心血管イベントのトリガーとなる.
- C
- 高齢者では排便開始前から血圧は上昇する.
- D
- 高齢者のほうが若年者より排便時の血圧上昇は大きい.
- E
- 心疾患患者の便秘症には刺激性下剤が第一選択である.
問題2
便秘症の病態について,正しいものはどれか.
- A
- 便秘症は大腸通過時間から2タイプに分類される.
- B
- 大腸通過遅延型便秘のかなりの症例が,過敏性腸症候群と重複している可能性が高い.
- C
- 大腸通過遅延型便秘における大腸通過時間の遅延は,主にhigh amplitude propagated contractions(HAPC)の頻度減少あるいは消失に起因する.
- D
- 大腸通過遅延型便秘の60%程度に,二次性に便排出障害型が合併する.
- E
- 便排出障害型便秘は,その他のタイプの便秘症と問診のみで鑑別可能である.
問題3
慢性便秘の改善には腸内細菌叢を整える食品の摂取が必要である.腸内細菌叢を整えるものとして,誤っているのはどれか.
- A
- オリゴ糖
- B
- 水溶性食物繊維
- C
- 植物性乳酸菌
- D
- オリーブ油
- E
- シンバイオティクス
問題4
本邦で特に多く処方されている便秘薬を2つ選べ.
- A
- 刺激性下剤
- B
- 分泌型下剤
- C
- 酸化マグネシウム
- D
- ポリエチレングリコール
- E
- 胆汁酸トランスポーター阻害薬
問題5
上皮機能変容薬に分類される慢性便秘治療薬はどれか.
- A
- ルビプロストン
- B
- エロビキシバット
- C
- ポリエチレングリコール
- D
- ラクツロース
- E
- リナクロチド
問題6
新規浸透圧性下剤であるラクツロースとポリエチレングリコール(PEG)の使い方について,誤っているものを2つ選べ.
- A
- ラクツロースは糖尿病患者に使用することはできない.
- B
- ラクツロースは肝性脳症を有する便秘患者に適している.
- C
- PEGは体内に吸収されないので副作用の心配がない.
- D
- PEGは増粘作用を有することから排便障害を改善する.
- E
- PEGは小児の糞便塞栓解除にも有効である.
問題7
慢性便秘症治療薬エロビキシバットについて,正しい記述を2つ選べ.
- A
- エロビキシバットの作用機序は,その薬剤成分が平滑筋を刺激して蠕動運動を起こすことである.
- B
- エロビキシバットは排便回数を有意に増加するが,便形状改善効果は弱い.
- C
- エロビキシバットは内服後の自発排便発現時間が他の薬剤に比べて早い.
- D
- エロビキシバットは糖尿病やParkinson病患者の症候性便秘に適応があり,通常の慢性便秘症患者には適さない.
- E
- エロビキシバット内服により,便秘症患者のQOLが改善する.
問題8
オピオイド誘発性便秘の原因とならない薬剤を2つ選べ.
- A
- トラマドール
- B
- アセトアミノフェン
- C
- ロキソプロフェン
- D
- ヒドロモルフォン
- E
- タペンタドール
問題9
80歳男性.数年前より便秘を自覚して近医より瀉下剤を処方されるも排便コントロールが不良で漢方薬の下剤を希望した.瘦せ気味で一般の刺激性下剤では腹痛を訴える.便はコロコロとした兎糞状で硬い.腹部膨満や放屁の訴えはない.利尿薬を含む降圧薬が処方されている.この症例に最適な漢方薬はどれか.
- A
- 大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)
- B
- 桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
- C
- 麻子仁丸(ましにんがん)
- D
- 大建中湯(だいけんちゅうとう)
- E
- 桂枝加芍薬大黄湯(けいしかしゃくやくだいおうとう)
問題10
誤っているものはどれか.
- A
- 浣腸後3分以上我慢してから排便するように患者に説明した.
- B
- 便が漏れる患者は,摘便が必要かもしれない.
- C
- 「便秘していないのに肛門が切れる」と訴える患者には,坐薬による排便管理を試みる価値がある.
- D
- 浣腸後1時間で筋性防御があれば穿孔を考える.
- E
- 浣腸後3時間で血色素尿を認めたら溶血を考える.
問題11
糞便塞栓(fecal impaction)に対し最初に行う治療として正しいものはどれか.
- A
- ルビプロストン処方
- B
- センノシド処方
- C
- グリセリン浣腸施行
- D
- 摘便
- E
- コロレクタルチューブ留置
問題12
30歳女性.最近「便秘のせいで腹痛がひどい」と訴えて近医を受診し,そこでの血液検査では異常を認めず,刺激性下剤を処方された.しかし,症状が改善しないため当院を紹介受診となった.半年前に受けた職場の健康診断では,便潜血検査を含めて異常を認めず,また腹部以外に症状はなく,生活習慣の大きな変化などもないとのことである.優先的に聞くべき問診内容を3つ選べ.
- A
- ピロリ菌感染歴
- B
- 腹痛回数
- C
- 腹痛時と通常時の便性状
- D
- 最近3カ月以内の上気道炎症状
- E
- 感染性腸炎歴
問題13
妊婦・授乳婦の慢性便秘に対する薬剤療法の適切な考え方を2つ選べ.
- A
- 漢方薬は第一選択薬に適している.
- B
- 酸化マグネシウムは第一選択薬に適している.
- C
- 刺激性下剤は使用禁忌である.
- D
- 浸透圧性下剤は便秘が改善されたらすぐに中止する.
- E
- ポリエチレングリコール製剤は,妊婦・授乳婦に対しても安全である.
問題14
思春期にみられる便秘の原因として,正しくないものはどれか.
- A
- ストレス
- B
- 過敏性腸症候群
- C
- 学校での排便回避
- D
- 神経性食欲不振症
- E
- Hirschsprung病
問題15
高齢者の便秘に関する記述で,正しいものを2つ選べ.
- A
- 地域在住高齢者と介護施設入居者で便秘の有病率に差はない.
- B
- 腸管蠕動運動機能や直腸知覚閾値は若年者と変わらない.
- C
- 酸化マグネシウム(Mg)の使用に際しては血清Mg濃度を定期的にモニターする必要がある.
- D
- 下剤の効果をすぐに出すため,高用量で処方を開始する.
- E
- 下剤の選択には薬効のみではなく,高齢者それぞれの身体状態に適した剤形を選ぶとよい.
問題16
91歳女性.脳梗塞による廃用症候群で,慢性便秘の状態.障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)C2で,ベッド上生活.胃瘻から経管栄養剤を注入している.家族より「14日間排便がない」との相談を受けた.訪問診療時に,便潜血陰性,腹部に腫瘤を蝕知せず,粗大病変は考えづらい状態.肛門診にて,直腸にブリストル便性状スケールでタイプ2の便を触知し,便秘と考えられた.排便日誌から水分摂取量が少ないと判断し,水分摂取を励行させ,繊維食の投与を心がけるように説明した.次に行う対応として,誤りはどれか.
- A
- 自ら摘便,浣腸を施行した.
- B
- 訪問看護師に摘便,浣腸をやってもらうよう指示した.
- C
- 訪問介護士に摘便,浣腸をやってもらうよう指示した.
- D
- 手持ちのセンノシド錠を頓用で内服させた.
- E
- 炭酸水素ナトリウム・無水リン酸二水素ナトリウム配合剤を挿肛した.
問題17
便秘の原因になる薬剤として,誤っているものはどれか.
- A
- ドネペジル
- B
- モルヒネ
- C
- イミプラミン
- D
- リスペリドン
- E
- プロピベリン
問題18
刺激性下剤依存症について,正しいものを2つ選べ.
- A
- アントラキノン誘導体下剤の長期・大量連用による結腸壁内Auerbach神経叢の重度障害は不可逆性となりうる.
- B
- 漢方薬の刺激性下剤に含まれる生薬はセンナである.
- C
- 大腸粘膜黒褐変の本態はメラニン色素の沈着である.
- D
- SITZMARKS®による大腸通過時間検査は2020年現在,健康保険に収載されている.
- E
- 重度では初めから蠕動亢進作用のある薬剤と軟便剤を併用してもよい.
問題19
35歳男性.4カ月前からの腹部膨満感と残便感を訴え,内科クリニックに来院した.便性状は硬便で便通は4~5日に1回であった.腹部は平坦・軟で圧痛なく,腸蠕動音は全範囲で軽度減弱している.腹部X線検査で便塊貯留以外の特記所見は認めなかった.18歳頃に統合失調症との診断を受け,現在は精神科クリニックに通院中である.経過中,精神科病院に複数回の入院歴がある.アパートで単身生活しているが,服装に季節感がなく,整容は乱れ,荒れた生活が窺われる.本人は「内服している精神科の薬のせいではないかと思う.薬をやめたい」と訴えた.内科医の対応として,下記のうち誤っているものはどれか.
- A
- 緩下剤の処方
- B
- 刺激性下剤の頓用
- C
- 精神科主治医への情報提供
- D
- 便秘を惹起していると思われる向精神薬の中止を指示
- E
- 生活習慣や食事内容について聴取し,改善を指導
問題20
透析患者の慢性便秘に使用する治療薬として,不適切なものはどれか.
- A
- ルビプロストン
- B
- センノシド
- C
- ラクツロース
- D
- 酸化マグネシウム
- E
- ピコスルファート
問題21
Parkinson病の便秘について正しいものはどれか.
- A
- 頻度は約10%である.
- B
- 大腸通過正常型である.
- C
- 抗Parkinson病薬は便秘に影響しない.
- D
- 運動症状より前には出現しない.
- E
- 二重盲検ランダム化比較試験で,ルビプロストンの有効性が示されている.
問題22
便排出障害型便秘について誤っているのはどれか.
- A
- 骨盤底筋強調運動障害が原因の1つである.
- B
- 診断上重要なのは詳細な問診の聴取である.
- C
- 器質性か機能性かの鑑別診断には,排便造影検査が有用である.
- D
- 治療の第一は思いっきり全身で努責することである.
- E
- 欧米ではバイオフィードバック療法が第一選択である.
問題23
直腸知覚低下に関する記述で,正しいものはどれか.
- A
- 直腸の知覚は内臓神経で,肛門管の知覚は体性神経で伝達される.
- B
- 直腸知覚低下の患者では直腸感覚閾値が低下している.
- C
- 便意を感じて直腸肛門抑制反射が起こると外肛門括約筋が弛緩する.
- D
- Hirschsprung病では直腸肛門抑制反射が陽性となる.
- E
- 巨大直腸症では直腸壁のコンプライアンスが低下している.
問題24
便秘症状をきたす病態のうち,腸管の拡張を伴うものを3つ選べ.
- A
- 機能性便秘症
- B
- 巨大結腸症
- C
- 小腸内細菌異常増殖症(SIBO)
- D
- 便秘型過敏性腸症候群
- E
- 慢性偽性腸閉塞症(CIPO)
(解答は本誌掲載) |