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特集の理解を深めるための28題


問題1

ペニシリン系抗菌薬のうち,正しいものを1つ選べ.

A
ペニシリン系抗菌薬の作用機序は細胞壁合成阻害である.
B
ペニシリン系抗菌薬は濃度依存性の抗菌薬であり,PK/PDパラメータはT>MIC(%)30~50といわれている.
C
MSSA菌血症において,アンピシリンは感受性があれば使用可能である.
D
ペニシリンとセファロスポリンアレルギーの交差反応性は8%である.
E
ピペラシリン/タゾバクタムとバンコマイシン併用療法において,副作用のリスクは上がらない.

問題2

第4世代セフェム系抗菌薬(CFPM)でカバーしうる細菌はどれか?

A
Enterococcus faecium
B
Bacteroides fragilis
C
Escherichia coli(ESBL産生)
D
Enterobacter cloacae(AmpC型BL産生)
E
Klebsiella pneumoniae(IMP型)

問題3

カルバペネム系抗菌薬に関連する以下の文章から正しいものを2つ選択せよ.

A
イミペネムは腎毒性が強いため,腎保護を目的とした抗菌活性のないシラスタチンとの合剤になっている.
B
注射用カルバペネム系抗菌薬の有効性に関するPK-PDの指標は%T>MICであり,一般的に投与回数を増やした方がこの値は大きくなる.
C
カルバペネム系抗菌薬の使用にあたり,治療開始後も臨床経過が良好であれば,そのまま治療終了まで継続して使用する.
D
カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)は,カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(CPE)と同義である.
E
人工呼吸器関連肺炎(VAP)に対するDRPMの使用はFDAでは承認されていない.

問題4

βラクタム系抗菌薬よりもキノロン系抗菌薬の使用が優先される疾患は次のどれか?

A
急性細菌性副鼻腔炎
B
単純性下部尿路感染症
C
旅行者下痢
D
Clostridioides difficile関連腸炎
E
レジオネラ肺炎

問題5

次の文の中で記載が誤っているものを一つ選べ.

A
バンコマイシンのMIC 2 μg/mLであれば,基本的にはバンコマイシンで治療可能である.
B
バンコマイシンとピペラシリン/タゾバクタムの併用は腎機能障害のリスクが上がる.
C
リネゾリドは生物学的利用能が良好な内服薬もあるため,外来治療に有用である.
D
2014年,リネゾリドの添付文書の重大な基本的注意および重大な副作用に代謝性アシドーシスが追加された.
E
ダプトマイシンの耐性機構は細胞膜の電位の変化により,膜への結合を阻害することである.

問題6

抗真菌薬の適正使用について,正しいものを2つ選択せよ.

A
カンジダ血症の場合,適切な抗真菌薬を使用すれば,中心静脈カテーテルの温存は可能である.
B
カンジダ血症の治療期間は,1週間である.
C
antifungal stewardshipの介入項目は多岐にわたるが,そのなかに,適切な抗真菌薬の選択を主担当医へ提案することが含まれる.
D
ボリコナゾール(ブイフェンド®)の目標トラフ値は,10~20 μg/mLである.
E
キャンディン耐性のCandida glabrataが報告されている.

問題7

17歳女性.39℃の発熱,咽頭痛を主訴に来院した.特に周囲で流行している疾患はないという.鼻汁,咳嗽の訴えはない.診察上,白苔の付着を伴う扁桃腫大,圧痛を伴う右前頸部リンパ節腫脹を認める.A群溶連菌性咽頭炎を疑い,迅速検査を行ったところ陰性であった.適切な対応はどれか.

A
アモキシシリンを処方する.
B
セフジトレン・ピボキシルを処方する.
C
咽頭培養を行う.
D
対症療法を行う.
E
ASOとADBaseBを提出する.

問題8

わが国の成人肺炎診療ガイドライン2017で,市中肺炎における細菌性肺炎と非定型肺炎の鑑別項目に含まれていないものを1つ選べ.

A
末梢血白血球数が10,000/uL未満である.
B
胸部聴診上所見が乏しい.
C
年齢60歳未満.
D
過去90日以内に2日以上の入院歴がある.
E
頑固な咳がある.

問題9

28歳男性.2日前から発熱と右下腹部痛が出現した.自宅で安静にしていたが改善なく,痛みに耐えられなくなったため来院した.
血圧124/82 mmHg,脈拍110回/分,呼吸回数28回/分,体温38.0℃.腹部診察上,tapping painを認め,右下腹部に強い圧痛点がある.CTで急性虫垂炎の診断が確定し,同日緊急手術となった.手術では腫大した壊死性の虫垂と一部穿孔を認めた.虫垂切除術が施行され,感染巣は十分にコントロールされていると判断した.術前よりセフメタゾールで治療が開始されている.
この患者の予定抗菌薬治療期間で適切なのはどれか.1つ選べ.

A
手術当日のみ
B
2~3日
C
4~7日
D
14日
E
28日

問題10

78歳男性.糖尿病の既往がある.昨日,発熱,黄疸で緊急入院し,急性胆管炎の診断がついた.緊急で内視鏡的なドレナージを施行した.入院時にピペラシリン・タゾバクタム1回4.5 g 6時間ごとで静脈注射薬が開始されている.入院時の血液培養2セットからE. coliおよびStreptococcus constellatusが検出された.胆汁培養では,E. coliおよびStreptococcus constellatus, Enterococcus faecalis, Bacteroides fragilis groupが検出された.微生物の感受性がある場合,この患者の最適治療(標的治療)として以下の抗菌薬のどれがもっとも適切か.患者は体重50 kg,腎機能は正常とする.

A
ピペラシリン・タゾバクタム1回4.5 gを6時間ごと
B
セファゾリン1回2 gを8時間ごと
C
セフトリアキソン1回2 gを24時間ごと
D
アンピシリン・スルバクタム1回3 gを6時間ごと
E
セフォペラゾン・スルバクタム1回1 gを12時間ごと

問題11

尿路感染症について誤っているものはどれか.

A
ST合剤では見かけ上のクレアチニンの上昇を認めることがある.
B
糖尿病患者における無症候性細菌尿では抗菌薬を投与した方が良い.
C
単純性膀胱炎の原因菌にStaphylococcus saprophyticusがあるが,基本的にはST合剤に感性があると考えてよい.
D
ESBL産生大腸菌による腎盂腎炎では,ショックや好中球減少を伴わず,感受性があればセフメタゾールを使用できる.
E
尿道留置カテーテル関連尿路感染症でカテーテルを引き続き必要とする場合は,カテーテルを入れ替えてから尿培養を採取するのが望ましい.

問題12

梅毒治療として正しいものはどれか.1つ選べ.

A
梅毒の治療はセフトリアキソン1 g点滴静注+アジスロマイシン1 g内服単回投与である
B
日本性感染症学会で推奨されている梅毒治療はアモキシシリン1回500 mgを1日3回投与である.
C
神経梅毒を合併していても,内服のアモキシシリンで治療できる.
D
神経梅毒を合併しない梅毒に対して,日本で用いられているアモキシシリン内服による治療は海外でも標準治療として行われている.
E
妊婦の梅毒治療ではアジスロマイシンが第一選択である.

問題13

感染性心内膜炎(IE)の治療に関する以下の選択肢から誤っているものを一つ選択せよ.

A
E. faecalisの自己弁IEの治療に,アンピシリンとセフトリアキソンの併用を選択した.
B
菌血症が持続したIE症例において,血液培養が陰性化した日から治療期間をカウントした.
C
メチシリン感受性黄色ブドウ球菌の自己弁IE症例の菌血症が1週間以上持続したので,セファゾリンにゲンタマイシンを併用した.
D
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌の人工弁IE症例の治療で,バンコマイシンに加えて,ゲンタマイシンを2週間,リファンピシンを治療終了時点まで併用した.
E
ペニシリン感受性レンサ球菌の自己弁IE症例の治療で,ペニシリンG 2400万単位を分割投与ではなく,持続静注投与法で使用した.

問題14

抗菌薬を適正に使用していると考えられるものはどれか.一つ選べ.

A
感冒症状に対し二次性細菌性肺炎の予防のため抗菌薬を処方した.
B
入院中の患者が高熱をきたしたのでまず使い慣れた抗菌薬の投与を開始してから原因の検索を開始した.
C
抗菌薬の必要ない病態と判断したが,受診患者の家族が抗菌薬処方を強く希望したので処方した.
D
抗菌薬の使用量を減らすため投与量を半減し短期間で終了するようにしている.
E
急性咽頭炎の患者に対し,迅速検査でA群溶連菌が起炎菌と確認したうえで抗菌薬を処方した.

問題15

咽頭炎について正しいものを2つ選べ.

A
ウイルス性咽頭炎では前頸部リンパ節腫脹が特徴的である.
B
淋菌性咽頭炎はほとんどの場合淋菌性尿道炎を合併する.
C
溶連菌性咽頭炎では後頸部リンパ節腫脹が特徴的である.
D
経口第3世代セファロスポリンはバイオアベイラビリティが低い.
E
溶連菌性咽頭炎の治療の第一選択薬はサワシリン1回500 mg 1日2回10日間である.

問題16

創傷感染の第1選択薬として用いる経口抗菌薬として正しいものはどれか.2つ選べ.

A
セファレキシン
B
第3世代セフェム系抗菌薬
C
アモキシリン/クラブラン酸
D
レボフロキサシン
E
アジスロマイシン

問題17

生来健康な20歳男性が今朝から吐き気,心窩部痛があり,嘔吐した.その後,水様下痢が4回出たため,外来を受診した.水分は摂取可能.血圧100/60 mmHg,脈拍86回/分,呼吸数12回/分,体温36.9℃で,腹部は蠕動音亢進,平坦,軟,圧痛なし.対処として適切なものはどれか?

A
レボフロキサシン経口薬処方
B
セフトリアキソン点滴静注
C
ホスホマイシン経口薬処方
D
クラリスロマイシン経口薬処方
E
抗菌薬は処方せずに飲水を励行し,対症療法を奨め,水分摂取が不可能になったり腹痛が増悪していきたら再受診をするように伝える

問題18

以下の設問に関して,正しいものを2つ選べ.

A
マクロライド系抗菌薬は緑膿菌に対して活性が高い.
B
マクロライド系抗菌薬はQT延長による心室性不整脈に関連している.
C
マクロライドの少量長期投与による耐性菌は報告されていない.
D
慢性咳嗽に対してマクロライド系抗菌薬投与が適応となる病態は多い.
E
咳に対するハチミツの効果は報告されている.

問題19

膀胱炎のマネジメントについて正しいものはどれか.

A
最もcommonな原因微生物である大腸菌のキノロン系抗菌薬の感受性は10年前と変わらず維持できている.
B
抗菌薬治療なしでも約50%で改善する.
C
NSAIDsによる対症療法では抗菌薬使用群と効果は変わらない.
D
1,500 mLの水分摂取量増加は膀胱炎の再発予防に有用である.
E
ESBL産生菌の治療の場合,ホスホマイシンが選択肢の一つとなるが,その吸収率は良好である.

問題20

市中肺炎の治療について以下の選択肢のうち正しいものはどれか?

A
緑膿菌をカバーする必要がある.
B
マイコプラズマは常にカバーする必要がある.
C
常に入院治療が必要である.
D
ペニシリン系で治療可能である.
E
MRSAをカバーする必要がある.

問題21

ESBL産生菌の治療において,誤っているものを選べ.

A
感受性結果のMIC値は参考程度に考える.
B
感染巣を出来るだけ明確にし,可能であればドレナージを試みる
C
ベータラクタム系を治療選択肢として用いる場合は,投与量,投与間隔を意識する
D
患者の全身状態が安定をみてから,非カルバペネム系抗菌薬への変更を試みる
E
軽症の腎盂腎炎であれば,セフメタゾールによる治療は可能である.

問題22

CRE,CPEについて正しいものはどれか.2つ選べ.

A
肺炎桿菌以外の腸内細菌科細菌によるカルバペネマーゼ産生はこれまで報告されていない.
B
コリスチンは承認用量で投与すると十分な治療効果を得るために必要な血中濃度をしばしば下回る.
C
CREのなかでもCPEによる感染症は予後良好である.
D
重症のCPE感染症の治療に複数の抗菌薬を併用することが予後の改善に貢献する可能性がある.
E
日本で検出されるCPEは海外で検出されるCPEと比べて抗菌薬への耐性傾向が強い.

問題23

MRSA感染症の治療について正しいものはどれか.

A
MRSA菌血症の加療は併用療法が基本である.
B
肺に多発空洞影を伴うMRSA菌血症ではリネゾリドが第一選択である.
C
バンコマイシンとピペラシリン・タゾバクタムの併用は腎障害のリスクである.
D
MRSA感染症で併用療法を行うのは人工弁の感染性心内膜炎のみである.
E
バンコマイシンとアミノグリコシドの併用は腎障害のリスクである.

問題24

コリスチンの有害反応として最もみられるのはどれか.

A
悪心
B
皮疹
C
肝障害
D
腎障害
E
歯牙着色

問題25

AmpCβ-ラクタマーゼにより分解されないβ-ラクタム系抗菌薬はどれか.1つ選べ.

A
ピペラシリン/タゾバクタム
B
セフメタゾール
C
セフトリアキソン
D
セフェピム
E
アズトレオナム

問題26

バンコマイシンと比較してフィダキソマイシンの特徴は以下のうちどれか?(複数可)

A
治療終了時の治癒率が有意に高い.
B
初回再発率が有意に低い.
C
再発例において2回目の再発率が有意に低い.
D
がん患者において有意に治癒率が高い.
E
がん患者において有意に再発率が低い.

問題27

タゾバクタム/セフトロザンの使用を考慮しても良い感染症はどれか? 2つ選べ.

A
肺炎球菌による重症市中肺炎
B
緑膿菌による発熱性好中球減少症
C
ESBLs大腸菌の関与する腹腔内感染症
D
多剤耐性緑膿菌による尿路感染症
E
黄色ブドウ球菌による感染性心内膜炎

問題28

非ハイリスクのインフルエンザ患者に対するバロキサビルについて適切なのはどれか.1つ選べ.

A
ウイルスが細胞外に放出されるのを阻害する.
B
罹病期間はオセルタミビルと差がない.
C
他者への感染をオセルタミビルよりも低下させる.
D
低感受性株検出率は近年のノイラミニダーゼ阻害薬耐性率よりも低い.
E
発症から48時間以降でも有効である.

(解答は本誌掲載)