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特集の理解を深めるための30題


問題1

心不全による肺うっ血について正しいものはどれか.1つ選べ.

A
胸部X線上で肺うっ血を認めれば心不全と診断できる.
B
肺うっ血時には胸部X線上の心陰影は必ず拡大する.
C
肺うっ血時には体液貯留があるため体重は必ず増加する.
D
肺動脈楔入圧と胸部X線上の肺うっ血所見とが乖離することがある.
E
肺動脈楔入圧が18 mmHgを超えると胸部X線上で肺うっ血を認める.

問題2

わが国における心不全の疫学について正しいものはどれか.2つ選べ.

A
心不全患者は減少傾向にあり,若年発症が多い.
B
心不全患者は増加傾向にあり,若年発症が多い.
C
心不全患者は増加傾向にあり,高齢化している.
D
うつや社会的サポートの欠如も心不全再入院の危険因子である.
E
左室駆出率(EF)の低下した心不全(HFrEF)が大半を占めるようになってきている.

問題3

心不全ステージAで診察室血圧146/92 mmHg,空腹時血糖135 mg/dL,HbA1c 7.3%,BMI 28.3の53歳男性患者に対する治療として正しいものはどれか.2つ選べ.

A
減塩に直結しないので減量や運動は指導しない.
B
降圧目標を家庭血圧で125/75 mmHg未満とする.
C
降圧薬の第一選択薬としてARBを選択する.
D
糖尿病合併患者であり,サイアザイド系利尿薬は禁忌である.
E
経口血糖降下薬としてSU薬から投与を開始する.

問題4

83歳男性.既往歴に陳旧性心筋梗塞があり,心不全増悪での入退院をくり返している.
生活歴:独居で,未婚のため子どももいない.今まで自分のことは自分で行い,何とか生活を送ってきたため,介護保険の申請も行っていない.飲酒は毎日1合の日本酒を摂取し,食事の準備は炊飯程度で,自分で調理をすることはなく,近所のスーパーマーケットで惣菜など購入し食べている.食事では漬物や梅干しは控え,惣菜などには醤油をかけないようにしている.近所のスーパーマーケットまでは自転車で15分の距離であり,息切れなく自転車に乗れている.
心不全教育は過去入院時に何度も受けており,心不全症状と体重モニタリングは行えているが,定期外来受診時に心不全増悪を認め,緊急入院することが多い.食事に関しては「これ以上自分では無理や.もうやれることはやっている.金もないから宅配弁当も毎日頼むことはできない」と言っている.
外来で安定しているときの検査結果は以下の通りである.
心エコー:EF 32%,LVDd 68 mm,LAD 48 mm,MR moderate,TR-PG 43 mmHg.
血液検査:Hb 9.8 g/dL,Cr 1.68 mg/dL,BUN 38 mg/dL,T-Bil 0.7 mg/dL,BNP 680 pg/mL.
心不全増悪時には体重増加を認めているが,肺うっ血はわずかである.症状としては労作時呼吸困難感,食欲不振,倦怠感を認めている.
この患者に対する多職種介入として適切でないものはどれか.1つ選べ.

A
主治医と定期外来診察の頻度を見直す.
B
栄養士にくり返し栄養指導の依頼を行う.
C
介護保険の申請について医療ソーシャルワーカーに調整を依頼し,訪問看護の導入に向けて手続きを進める.
D
外来診察以外に,外来心臓リハビリテーションや看護面談で受診する機会を増やし,医療者も外来で心不全モニタリングを行う.
E
患者はどのようなときに生活で不具合を感じるのか,その不具合がいつ頃生じるのか,不具合が生じたときにどのように対処しているのかを患者に語ってもらうように促し,看護師が確認をする.

問題5

心不全の運動療法の絶対禁忌とならないものはどれか.2つ選べ.

A
NYHA分類 Ⅳ度
B
左室駆出率<10%
C
活動性の心筋炎
D
未治療の不安定狭心症
E
未治療の運動誘発性重症不整脈
NYHA:New York Heart Association

問題6

心不全の栄養管理として正しいものはどれか.1つ選べ.

A
低栄養はフレイルの原因となる.
B
栄養補助食品の有用性が確立されている.
C
すべての患者に飲水制限が推奨されている.
D
減塩の目標は5 g/日未満が推奨されている.
E
低栄養の原因にはサルコペニアが関与している.

問題7

入退院をくり返す高齢心不全患者の管理として適切でないものはどれか.1つ選べ.

A
家族などの介護者もケアの対象となる.
B
多くの患者が心疾患以外の併存疾患を有する.
C
多施設・多職種での的確な情報共有が大切である.
D
基幹病院の循環器専門医が心不全管理において主体的な役割を果たす.
E
あらかじめ患者や家族と受けたい医療やケアについて話し合っておくことが大切である.

問題8

Framinghamうっ血性心不全診断基準の大項目に含まれていない身体所見はどれか.1つ選べ.

A
Ⅲ音
B
湿性ラ音
C
下腿浮腫
D
頸静脈怒張
E
肝頸静脈逆流

問題9

BNP・NT-proBNPについて正しいものはどれか.1つ選べ.

A
BNPのほうがNT-proBNPよりも腎機能障害の影響を受けやすい.
B
BNPはNT-proBNPに比べると採血後の値の安定性が高く,変動が少ない.
C
BNP・NT-proBNP値は心臓以外の要因によって影響を受けることは少ない.
D
BNP 100 pg/mL未満あるいはNT-proBNP 400 pg/mL未満であれば,心不全はほぼ否定される.
E
治療対象となる心不全の可能性があるため,精査あるいは専門医に紹介するカットオフ値はBNP 100 pg/mL,NT-proBNP 400 pg/mLと提案されている.

問題10

左室拡張能の低下や左室充満圧の上昇を評価するのに用いられるエコー指標ではないものはどれか.1つ選べ.

A
EF
B
左房容積係数(LAVI)
C
三尖弁逆流速度(TRV)
D
僧帽弁輪部拡張早期波(e′)
E
左室流入血流速波形(E波,A波)

問題11

収縮力の低下した心不全(HFrEF)において,予後改善効果のあるβ遮断薬と,わが国における最大承認用量の組み合わせで正しいものはどれか.2つ選べ.

A
アテノロール─50 mg/日
B
カルベジロール─5 mg/日
C
カルベジロール─20 mg/日
D
ビソプロロール─5 mg/日
E
ビソプロロール─20 mg/日

問題12

HFrEFにおいて心血管イベント抑制効果が認められていない薬剤はどれか.1つ選べ.

A
ARB
B
ACE阻害薬
C
レニン阻害薬
D
抗アルドステロン薬
E
アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)

問題13

心不全と利尿薬について正しいものはどれか.1つ選べ.

A
うっ血の程度は心不全患者において再入院率と関係がない.
B
ループ利尿薬に対して抵抗性を示す患者を予測することは困難である.
C
ループ利尿薬は種類によって予後に対する影響が違うことが示されている.
D
心不全患者のうっ血治療としてのループ利尿薬は,ガイドラインでクラスⅠ,エビデンスレベルAで推奨されている.
E
トルバプタンは腎機能障害合併急性心不全患者に使用すると,ループ利尿薬のみで治療するよりも予後を改善する.

問題14

ジギタリスが有用と考えられる心不全患者の特徴はどれか.1つ選べ.

A
女性
B
高齢
C
EF低下
D
腎機能低下
E
急性心筋梗塞

問題15

心臓再同期療法(CRT)について誤っているものはどれか.2つ選べ.

A
NYHA分類 Ⅱ度に対して適応とはならない.
B
左室リードの留置部位は心尖部であることが重要である.
C
CRTはEFが保たれた心不全(HFpEF)に対して適応とはならない.
D
CRTは心電図上QRS幅120 msec未満の症例に対して適応とはならない.
E
CRTは心不全患者のQOL改善効果のみならず予後改善効果も示されている.

問題16

EFの保持された心不全(HFpEF)について誤っているのはどれか.1つ選べ.

A
HFpEFは心不全患者全体の10%の頻度である.
B
日本のガイドラインではEF 50%以上の心不全患者をHFpEFと定義している.
C
HFpEF患者の生命予後を改善するエビデンスのある薬物療法はない.
D
HFpEF症例に対して,うっ血に伴う自覚症状軽減目的に利尿薬を投与することは推奨クラスⅠである.
E
適切に処方された運動療法はHFpEF患者の運動耐容能改善効果が期待できる.

問題17

心房細動合併患者の抗凝固療法について正しいものはどれか.1つ選べ.

A
ワルファリンのコントロールには性差は関係ない.
B
DOAC投与の際は減量基準を順守しなければならない.
C
DOACはワルファリンに比べて頭蓋内出血のリスクが少ない.
D
DOAC投与の際はワルファリンと異なり血液検査は必要ない.
E
うっ血性心不全の重症度と心房細動の合併率は無関係である.
DOAC:direct oral anticoagulants

問題18

心不全に合併する不整脈について正しいものはどれか.2つ選べ.

A
心房細動アブレーションに用いられるカテーテルとして冷凍凝固を行うためのクライオバルーンがある.
B
心不全に合併する心房細動は心機能低下の結果であり,根治は難しい.
C
心不全患者ではカテーテルアブレーションにより不整脈を根治した後に収縮能が正常化することがある.
D
心不全患者では合併症を考慮し,無症候の心室期外収縮はカテーテルアブレーションの適応とならない.
E
器質的心疾患に伴う心室頻拍の多くは,障害された心筋部分から出現する異常自動能に伴うものである.

問題19

致死性不整脈合併の植込型除細動器(ICD)植込み心不全患者に対して適切な対応はどれか.2つ選べ.

A
ICD植込みは除細動機能を最優先する.
B
不適切作動が出現しても生命予後を優先し設定変更はしない.
C
心房細動による不適切作動に対して心房細動アブレーション術を施行する.
D
初発心不全入院急性期に発生した持続性心室頻拍に対するICDを植込む.
E
ICD不適切作動は予後不良だけでなく患者の精神面に影響を与えることを念頭に置き,サポートの準備をする.

問題20

急性心不全のクリニカルシナリオ(CS)分類において主病態を急性の肺水腫とするものはどれか.1つ選べ.

A
CS1
B
CS2
C
CS3
D
CS4
E
CS5

問題21

40歳男性.1カ月前から労作時呼吸困難を自覚し,3日前から乏尿,起坐呼吸となり受診した.特記すべき既往歴はない.
身体所見:意識は清明.四肢末梢は冷たく,冷汗と下腿浮腫を認める.聴診ではⅢ音とⅣ音とを聴取し,両側の胸部にcoarse crackleを聴取する.脈拍112/分,整.血圧72/50 mmHg.呼吸数28/分.
血液生化学所見:Cr 3.1 mg/dL,Na 134 mEq/L,K 4.3 mEq/L,Cl 100 mEq/L,BNP 1,540 pg/mL(基準≦18.4).
動脈血ガス分析(room air):pH 7.30,PaCO2 32 Torr,PaO2 54 Torr,HCO3 15 mEq/L.
心エコー:EF 20%程度.
呼吸管理とともに,まず投与すべき治療薬として適切なものはどれか.1つ選べ.

A
利尿薬
B
ドブタミン
C
血管拡張薬
D
生理食塩水の急速輸液
E
ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害薬

問題22

血管拡張薬が良い適応となる症例はどれか.2つ選べ.

A
右室梗塞
B
心原性ショック
C
大動脈弁狭窄症
D
起坐呼吸を伴ううっ血性心不全
E
僧帽弁逆流を伴ううっ血性心不全

問題23

急性心不全における呼吸管理として正しいものはどれか.2つ選べ.

A
初期治療では,SpO2>95%に維持するように迅速に酸素療法を開始する.
B
酸素吸入開始後に酸素化が不十分な場合は,躊躇せず速やかに気管挿管を試みる.
C
収縮期血圧<85 mmHgの場合は,必ずNIPPVを用いた呼吸管理が必要である.
D
NIPPV使用時は,SpO2>99%を目標としてFiO2 1.0を長時間投与する.
E
NIPPV使用時は,自覚症状改善,PaO2/FiO2上昇,呼吸数減少,血行動態改善により効果を判定する.
NIPPV:非侵襲的陽圧換気療法

問題24

大動脈弁狭窄症(AS),僧帽弁閉鎖不全症(MR)の治療について正しいものはどれか.2つ選べ.

A
重症ASに対して,TAVIによる生命予後改善効果は示されていない.
B
重症ASに対するTAVIは,開胸高リスク患者に対して良い適応である.
C
MitraClip®による僧帽弁形成術では,経食道心エコーが重要な役割を担う.
D
MitraClip®による僧帽弁形成術では,経動脈的な大口径シース挿入が必要である.
E
機能性MRに対する開胸での僧帽弁手術による生命予後改善効果は示されている.
TAVI:経カテーテル的大動脈弁留置術

問題25

わが国における心臓移植について誤っているものはどれか.1つ選べ.

A
心臓移植の待機期間は1,000日以上である.
B
心臓移植後の5年生存率は90%以上である.
C
免疫抑制療法により,移植後は感染症のみならず悪性腫瘍のリスクも増大する.
D
植込型補助人工心臓などデバイスの進歩により,在宅での移植待機も可能となる症例も増えている.
E
高齢や心肺停止蘇生後,または多量のカテコラミン投与を必要とするドナー心臓は,術後のグラフト機能不全のリスクが高いため移植できない.

問題26

48歳男性.特発性拡張型心筋症の診断を受け加療中であるが,今回,明らかな誘因なく慢性心不全の急性増悪をきたし,過去1年間で3回目の入院となった.静注強心薬の投与によって心不全症状は改善したが,減量を開始したところ,ふらつきの自覚症状と腎機能の悪化を認めている.
患者はβ遮断薬やACE阻害薬などの心不全の標準的治療薬は投与されており,治療アドヒアランスは良好である.介護者によるサポート体制も整っている.
この患者の治療方針について適切なものはどれか.2つ選べ.

A
INTERMACSプロファイルは2であると考えられる.
B
β遮断薬やACE阻害薬を減量したうえで静注強心薬の減量を図る.
C
静注強心薬の減量をいったん見送り,自覚症状や腎機能の経過次第では再増量も検討する.
D
静注強心薬依存状態であると判断して心臓移植実施施設もしくは補助人工心臓実施施設に紹介する.
E
静注強心薬の減量中止を行ったうえで退院を目指し,次回心不全増悪をきたした場合に心臓移植実施施設もしくは補助人工心臓実施施設に紹介する.

問題27

再生医療等技術について誤っているものはどれか.1つ選べ.

A
薬事法改正により,条件付早期承認制度が法制化された.
B
低リスクの第三種技術でも厚生労働大臣へ計画を提出する必要がある.
C
他家体性幹細胞移植は高リスクの再生医療等技術であり,第一種に分類される.
D
再生医療等安全性確保法により再生医療を行う場合の届出が義務化された.
E
再生医療等安全性確保法により細胞の培養・加工は医療機関内で行うことが義務化された.

問題28

人生の最終段階においての意思決定で重視されている,「将来意思決定能力がなくなったときに備えて,あらかじめ自分が大切にしていること,治療や医療に関する意向,代理意思決定者などについて専門職種と話し合うプロセス」を表す言葉はどれか.1つ選べ.

A
緩和ケア
B
終末期ケア
C
リビングウィル
D
ACP(advance care planning)
E
DNAR(do not attempt resuscitation)

問題29

人生の最終段階における医療・ケアの在り方として誤っているものはどれか.1つ選べ.

A
患者が多職種チームと十分な話し合いを行う.
B
患者本人・家族との話し合いがくり返し行われる.
C
患者に医療従事者から適切な情報の提供と説明がされる.
D
ケアの決定に至るプロセスは診療記録としてまとめる必要はない.
E
本人・家族などの精神的・社会的な援助も含めた総合的なケアを行う.

問題30

終末期心不全の苦痛緩和のために用いられる鎮静薬として適切なものはどれか.2つ選べ.

A
モルヒネ
B
ミダゾラム
C
プロポフォール
D
ハロペリドール
E
デクスメデトミジン

(解答は本誌掲載)